中国に輸入された北海道のホタテ(写真:CFoto/アフロ)
目次

(安木 新一郎:函館大学教授)

中国と米国から襲われるホタテ

 2023年8月から中国は日本産水産物の輸入を全面的に停止した。北海道から輸出されるホタテの大部分は中国向けだったので、ホタテ業者は窮地に立たされた。ホタテを日本国内で消費してもらおうとさまざまな取り組みがなされた。ベトナムや米国への輸出も急増した。

 実は中国向け殻付きのホタテの6割は、中国で加工された上で米国に再輸出されていた。現在、ベトナムを中心に東南アジアでホタテは加工されているが、これらも米国市場向けだ。

 ところが、今度はトランプ関税が襲ってきた。中国経由でなくても、日本やベトナムからホタテを輸出すれば、高い関税がかかる可能性がある。その中で、ホタテ業者からは、もう米国には売れないとの悲鳴が上がっている。

 6月29日に、中国政府は日本産水産物の輸入再開を発表したものの、北海道には冷ややかに見ている加工業者もいる。道内でのホタテ漁獲量が減少する中、すでに中国に売る分はあまりないのだ。

 このように、これまでの対中依存からは脱却が進んでいるが、課題も多い。