撮影/西股 総生(以下同)
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(歴史ライター:西股 総生)

はじめて城に興味を持った人のために城の面白さや、城歩きの楽しさがわかる書籍『1からわかる日本の城』の著者である西股総生さん。JBpressでは名城の歩き方や知られざる城の魅力はもちろん、城の撮影方法や、江戸城を中心とした幕藩体制の基本原理など、歴史にまつわる興味深い話を公開しています。今回は「江戸城を知る」シリーズとして、江戸城の一般公開されていない3つの門と、外桜田門を紹介します。

坂下門・西の丸大手門・半蔵門〜一般公開されていない3つの門

 江戸城の門の中には、皇居の出入り口として使用されているため、一般公開されていない門がいくつかある。前回紹介した桔梗門の他にも、坂下門・西の丸大手門・半蔵門などがそうだ。

桔梗濠ごしに見る坂下門。戦時中を描いた映画などでよく登場する門である

 西の丸の通用口だった坂下門は、現在は宮内庁の正門となっていて一般の通行はできないが、特別公開やお正月の一般参賀の時には通ることができる。本来は立派な枡形虎口であったが、明治時代に高麗門を撤去して、渡櫓門を90度振った位置に建て直してある。通行する機会があったら、どのように改変されたか目を皿のようにして観察しよう。もとは立派な枡形だったことがわかるはずだ(通行時に立ち止まると注意されるので、素早く観察しよう)。

坂下門

 西の丸大手門は、その名の通り西の丸の正門だったところで、江戸時代には「西の丸様」と呼ばれた将軍の世子や隠居した前将軍が通っていた門だ。坂下門と同様、もとは枡形だったが明治時代に改変され、渡櫓門が正面を向いている。土橋手前の柵の所から観察できるが、午後は逆光になるので撮影しづらい。

西の丸大手門。画面右手方向の奥に伏見櫓が見えるので、観光客が絶えない

 もう一つ、立派な枡形と城門の建物が現存しているにもかかわらず、全く見学できないのが半蔵門である。ここは、西の丸の外側に広がる吹上(ふきあげ)の出入り口で、この門の警備を担当した服部半蔵の屋敷が近くにあったことから、半蔵門の名が付いた。

 吹上の西側を守る半蔵濠や桜田堀は広大ゆえに、半蔵門の前の土橋も長大だ。その土橋の手前に柵が設置されて警備が厳重だから、門に近づいて観察することすらできない。現在の江戸城でもっとも難攻不落な門となっているが、城門とは本来、一般人がうかうか近づける場所ではなかったことがわかる場所ともいえる。

服部半蔵の名に由来する半蔵門。こちらも忍気分で植栽の切れ目から望遠レンズで「盗撮」してみた