広島の「由宇練習場」、楽天の「泉練習場」という個性
ここまで紹介した10の本拠地は、正式名称が「球場」「スタジアム」だが、広島と楽天の二軍本拠地はともに「練習場」となっている。
広島の「広島東洋カープ由宇練習場」は、山口県岩国市にある。最寄り駅はJR由宇駅だが、球場までは直線で8.4km、山の中腹にある。球場行きのバスは1日6便、現実的には往復6000円かけてタクシーで行くしかない。「秘境」と揶揄されるゆえんだ。

この球場だけが試合観戦は無料。駐車場は有料。観客席は内外野ともに芝生で、3500人収容。試合のある日だけ売店とキッチンカーが出る。熱心なファンが家族連れで来ているが、ここでプレーする選手は、早く一軍のマツダスタジアムに行きたいだろうと思わせる。選手にそう思わせる環境にあえて置くことも、一つの「育成哲学」と言えるかもしれない。
楽天の「楽天イーグルス泉練習場(森林どり泉スタジアム)」は、地下鉄南北線泉中央駅からバスで20分ほど。住宅地の中にある。初めて訪れた観客は衝撃を受けるかもしれない。

一塁側には200席ほどの客席があるが、三塁側は運動会の保護者席のように地面にロープで区割りがしてあるだけ。観客は折りたたみ椅子を持ち込んで座る。フィールドと同じ目線ではあるが、試合全体は見渡せない。昨年まで食事持ち込み禁止だったが、今年から食事ができるようになった。他の本拠地は小ぶりでも電動スコアボードだが、ここでは手動だ。大学野球部の球場より数段見劣りする。
しかしながら「推し活」をする女子には、この球場は人気がある。三塁側の縄張りの後ろが選手通路になっていて、選手との距離が極めて近いからだ。色紙を持ったコレクターも待ち受けている。
なおファームリーグのくふうハヤテ静岡、オイシックス新潟は本拠地球場を所有していない。この2球団については改めて取り上げたい。
イースタンリーグの選手は巨人の「ジャイアンツタウン スタジアム」と楽天の「森林どり泉スタジアム」で試合をする。ウエスタン・リーグの選手も阪神の「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」と広島の「広島東洋カープ由宇練習場」で試合をする。ドラフトでどの球団に指名されるかで、その後の練習、生活環境が大きく変わることを実感するはずだ。
二軍は、地方球場や一軍本拠地などでも公式戦を行う。二軍本拠地での試合は一軍ほど多くはないが、それでも本拠地の「格差」は大きい。
二軍本拠地は、いわば球団のバックヤードだ。ここから見えてくるのは、12球団のリアルな「経済格差」だ。毎年のように設備投資をする球団があれば、老朽化した施設をそのまま使い続ける球団もある。
地球温暖化が進んでいるが、巨人、阪神、ソフトバンク、DeNAの二軍本拠地を除き、ナイター設備がない。危険な暑さの中でデーゲームをしている。
ファームの育成環境は、大いに改善の余地があるといってよいだろう。