さらに「大きな政府」となるドイツ

 いわゆる先進7カ国(G7)の歳出を2024年時点で比較すると、ドイツの歳出は名目GDP(国内総生産)の49.5%と、フランス(57.2%)とイタリア(50.6%)に続き、3番目に大きい(図表2)。ヨーロッパ各国は、基本的に「大きな政府」による経済運営をよしとする。つまり、政府が民間の経済活動に積極的に介入するスタイルである。

【図表2 G7の財政状況(2024年)】

(注)濃い部分は起債による調達分 (出所)ドイツ連邦財務省

 対照的なのが米国だ。民主党バイデン前政権の下で歳出が膨らんだにもかかわらず、米国の歳出は2024年時点で名目GDPの37.6%にとどまっており、政府による民間の経済活動が限定的な「小さな政府」をよしとする。日本も同39.4%と歳出の規模はそれほど大きくなく、その意味では「小さな政府」だが、公的債務の規模が圧倒的に大きい。

 話をドイツに戻すと、ドイツは2025年度以降に拡張予算路線を取る。イタリア並みか、イタリアを抜いてG7ではフランスに次ぐ「大きな政府」路線を歩むことになる。

 また、これまでのドイツは均衡財政を重視しており、歳出のほとんどを歳入で賄い、国債を発行してこなかったため、公的債務残高が名目GDPの60%程度と少なかった。しかし、今後は国債の発行による資金調達が増えるため、公的債務残高は増える。

 もちろん、基本的には均衡財政の発想が強いことや、欧州連合(EU)が容認する財政拡張にも限界があることなどから、ドイツの公的債務残高がいきなり急激に増えることはない。それでも、ドイツは借金依存型の「大きな政府」路線に転換することになる。