メルツ政権の拡張予算は景気浮揚につながるか(写真:ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 フリードリヒ・メルツ首相が率いるドイツの保革大連立政権は、6月24日、2025年度の予算案を閣議決定した。ドイツではオラフ・ショルツ前首相が率いた左派連立政権の下で2025年度予算が成立せず、暫定予算が執行されていた。とはいえ、2025年度予算が成立するのは、議会の夏季休暇が明けた9月以降になる見込みである。

 具体的に数字を確認すると、ドイツの2025年度の連邦予算は2024年度の予算に対して6%増となる5030億ユーロを見込む(図表1)。また、同時に示された中期の予算計画では、2027年まで予算は5000億ユーロ規模で横ばいだが、2028年から膨らみ、2029年には5738億ユーロとコロナショック直後の2021年以来の大型予算となる。

【図表1 ドイツ連邦政府の歳出と予算案】

(出所)国際通貨基金(IMF)

 こうしたドイツの拡張型予算を支えるのは国債だ。2025年の歳入不足額、つまり新規国債の発行額は818億ユーロと、2024年の333億ユーロから2.5倍強となる見込みである。先に述べたように2028年から歳出は増加するが、それと歩調を合わせるかたちで、新規国債の発行額も、2029年には1261億ユーロまで増加する計画である。

 ドイツはメルツ政権が成立する直前の3月18日、憲法に相当する基本法を改正し、国債発行に基づく財政拡張に向けた筋道を付けていた。メルツ政権は、とりわけ公共投資と軍事支出の拡大を重視しており、うち公共投資に関しては2025年度予算案だけで1150億ユーロ超と、2024年から55%も増やす野心的な計画となっている。