ロシアと中国、北朝鮮との関係改善を望んでいる李在明政権は、NATOの糾弾声明に参加して中国やロシアと対立する状況だけはできるだけ避けたかったのだろう。そして、この決定の裏には、李鍾奭(イ・ジョンソク)国情院長が率いる「自主派」の影響力が働いたとの推測が出ている。

「李在明政権では現在、李鍾奭国情院長が率いる『自主派』と魏聖洛安保室長が率いる『同盟派』(米韓同盟中心の外交を志向する外交関係者)が共存しているが、今回の不参加決定は自主派が勝機をつかんだとのシグナルとも解釈される」というのがこの韓国記者の追加解説だ。

中国・北朝鮮・ロシアに遠慮して自由主義陣営に一定の距離置くつもりか

 李鍾奭国情院長は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の「均衡外交」の創始者であり、自主派の代表的な人物だ。「自主派」とは、米国をはじめとする大国の外交論理で朝鮮半島の安保問題が左右されてはならず、状況別に韓国が自主的に判断すべきという主張で、盧武鉉政権以降、進歩政権の外交安保路線の金科玉条となってきた。

 彼らは、盧武鉉政権の「均衡外交」、文在寅政権の「韓半島運転者論」(南北問題など朝鮮半島の外交安保では韓国が運転者にならなければならない)、李在明政権の「実用外交」などと名前を変えながら、時には米国に対立する自主的な外交を推進してきた。代表的なのが、文在寅政権時代の「日韓GSOMIA破棄宣言」のような騒動だ。

 韓国の保守政界は李大統領のNATO首脳会議不参加に対して「自主派の浮上を告げる危険なシグナル」と主張している。

「国民の力」サイドからは、次のような批判が出ている。

「NATO不参加は、李在明外交政策をいわゆる『対米自主派』が主導するという公開宣言のようだ」(韓東勳元代表)

「NATOとその他のインド太平洋地域パートナー国(IP4)からは、韓国の新政府が同盟とパートナーよりも中国、ロシアおよび北朝鮮との関係に優先順位を置くのではないかという疑問を持たれる可能性もある」(金ソッキ外交統一部委員長)

「改革新党」からも「大統領周辺には『韓米同盟より自主国防』を叫ぶ80年代の運動圏出身外交官が布陣している。大統領が彼らの助言に振り回されたとすれば、これは非常に危険なシグナルだ」という“非難声明”が出た。