韓国の李在明大統領(写真:Yonhap News Agency/共同通信イメージズ)

 北朝鮮が河川に放流している放射性廃水が、ソウル市民の飲料水源である漢江と西海(黄海)を汚染しているという疑惑が浮上している。だが韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権は「問題なし」との姿勢を示していることで、放射能に敏感な韓国に波紋が広がっている。

 というのも、李在明大統領は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権時代、日本の福島第一原発の処理水の放出に対して「第2の太平洋戦争」「許せないテロ行為」と猛非難し、ハンガーストライキまで敢行したからだ。こうした過去の行状を掘り起こされ、「ダブル・スタンダード」との非難に直面している。

現地では「奇形児が多く生まれ、原因不明の奇病が流行」とのうわさも

 発端は、北朝鮮専門メディア『デイリーNK』の報道だった。米国の環境団体が提供する衛星写真を分析し、「北朝鮮の黄海北道平山郡のウラン精錬工場の沈殿池から廃水が排水路に沿って近くの河川に放流されている」と報じた。この近くの小川は、2km下流で礼成江(イェソンガン)と合流し、南に流れて西海(黄海)の京畿湾内部にある江華湾へと注いでいる。そこは韓国との国境付近で、漢江の河口にも近い。つまり、北朝鮮の処理されていない核廃棄物によって韓国の河川と海が汚染されていると、韓国内が騒然となっているのだ。

ウラン精錬工場がある北朝鮮の平山(提供:共同通信社)

 平山に位置する同施設はウラン鉱石を採掘、精錬して核兵器の原料であるイエローケーキ(ウラン精鉱)を生産する。ウラン精錬過程で発生するウラン、ラジウム、トリウムなどの放射性物質と各種重金属を含む廃水は沈殿池に貯蔵されているが、2024年10月の衛星写真を分析した結果、この沈殿池が飽和状態に達し、周辺河川に廃水が溢れているというのがデイリーNKの報道の主な内容だ。