食料自給率は本当に上げるべきなのか
イランは米国を中心とした西側から経済封鎖を受けており、食料についても安全保障を強く意識しなければならない立場にある。だが、そのイランでも食料自給率は決して高くない。また常に周辺と戦火を交えているイスラエルでも食料自給率は低い状態である。
そんな両国は現在戦時下にあるが、食料の供給になんの問題も生じていない。両国が食料危機に陥りそうだというニュースを聞くことはない。
現代社会では、食料を武器に相手に屈服を迫ることはできない。その理由は、ロシアだけでなく多くの先進国が食料輸出国になっているからだ。非常時でも食料は輸入できる。食料貿易では輸出国ではなく輸入国の方が立場が強い。
わが国において食料安全保障や食料自給率が議論されると、保守系の人々も、そして不思議なことにグローバリストであるはずのリベラル系の人々までもが、食料自給率を上げるべきと主張することが多い。
だが、食料自給率の向上を主張をする人々は観念論の世界に生きており、広く世界を見ることはない。これは島国に生きる日本人の欠点と言ってよい。
イランとイスラエルの戦争は、食料自給率をどう考えるべきかについて、我々日本人に極めて貴重な判断材料を提供してくれている。