人権を旗印に台頭する反イスラエル

 それが揺らいできたのは、リクード、特に右派連立のネタニヤフ政権が登場し、国家安全保障第一主義を推進してきた唯我独尊的外交以降ではないだろうか。

 ユダヤ人相互扶助組織「ブナイ・ブリス」*3カナダ支部のオースチン・パーセルズ氏はこの現実についてこう見ている。

「米国の極右、極左が一致して流す反イスラエル・レトリックは、社会的にも制度的にも反ユダヤ主義の仕業だろう。大学、労組、メディアに人道主義、公平主義という隠れ蓑を羽織って浸透してきている」

*3=B'nai B'rith(ブナイ・ブリス)は、ヘブライ語で「契約の息子たち」という意味。ユダヤ人コミュニティの世界規模の相互扶助組織で、人権向上活動、福祉活動、イスラエル支援などを行っている。1843年にニューヨークで設立。

‘Enemy of Our Enemy’: Why the Far-Right Calls for a ‘Free Palestine’ | RealClearInvestigations

 これまで政界、財界、メディア界、学界に多くの人材を送り込み、反ユダヤ主義を追い払ってきた在米ユダヤ・パワーも、極右・極左双方からの反ユダヤ・キャンペーンにたじろいでいる。

 大学キャンパスでの反ユダヤの動き、ユダヤ教宗教施設への暴力行為が取り沙汰される中で、MAGAからの反ユダヤ主義の台頭にユダヤ社会が衝撃を受けている。

 それが今、イスラエル・イラン事変への米国による軍事介入という現実問題として顕在化している。

 そのカギを握っているのはトランプ氏という唯我独尊の大統領だ。