鎮圧の論拠は薄弱
今回のロサンゼルスでの鎮圧作戦について、暴動鎮圧について詳しいヒューストン大学のクリス・ミラソロ教授は、こう指摘している。
「トランプ氏がロサンゼルスでのデモ隊を鎮圧するために州兵や海兵隊を投入した論拠は薄弱で、お粗末だ」
「連邦政府の建物や職員に甚大な被害や危害が加えられたわけではない。不法移民国外追放に反対するブルー・ステート(民主党支配州)の知事に圧力をかけ、州権を削ぐのが本当の狙いだろう」
(Trump flexes executive power through the military - POLITICO)
軍事パレード対抗デモの鎮圧予行演習?
さらに、トランプ氏の狙いについて深読みするベテラン・ジャーナリストもいる。
かつてジョンソン第36代大統領が1965年にアラバマ州セルマに州兵を動員した「ブラディ・サンデー」(血の日曜日)を取材した経験を持つH氏(84)だ。
「トランプ氏の今最大の関心事は、6月14日にワシントンで開く軍事パレードだ。名目は米陸軍創設250年記念軍事パレードだが、この日はトランプ氏の79歳の誕生日」
「そこでダブルで祝おうというわけだが、これに対抗してリベラル派は『ノー・キングズ・デー』(No Kings Day)と銘打った全米レベルの反トランプ集会・デモを実施する」
「これが暴徒化する可能性もある。ロサンゼルスでの不法移民摘発妨害に州兵や海兵隊まで動員して鎮圧しようという作戦は、6月14日の『ノー・キングズ・デー』粉砕の予行演習だ」
「どこまで大統領が武力で反対派を鎮圧できるか、議会や司法、そして世論が容認するかを試しているのかもしれない」
6月14日の軍事パレードには、世界最強と謳われる「M1エイブラムス」戦車28両を含む装甲戦闘車両150両、戦闘機、ヘリ50機が登場、新旧軍服の兵隊7000人が参加する。観衆は20万人を予想している。
(How will DC house 7000 soldiers for June 14's military parade? 7News gets an Army tour )
これにかかる費用は2500万ドル(約36億円)から4000万ドル(約58億円)と試算されている(これにはシークレットサービスをはじめ法執行にかかる費用は含まれていない)。
(DC prepares for Trump's June 14 military parade | AP News)
(Trump military parade: Massive' No King' protest planned in more than 1500 US cities to counter Trump's June 14 parade: 10 points - The Economic Times)
このパレードに対抗してリベラル派100団体は同日、ワシントンで大規模な反トランプ・デモ集会を開催する。
スローガンは「米国には王様はいない」「トランプ王を追放せよ」。
軍事パレードと時を同じくして、全米1500都市で「トランプ王、打倒」をアピールする。
主催者側は平和的な集会を呼びかけているが、ロサンゼルスの軍隊動員を目の当たりにした参加者が暴徒化しないという保証はどこにもない。
(No Kings)