裁量でどうにでもなる要綱、それでいいのか
要綱を読むと、その「交付対象事業」は「河川管理者、下水道管理者及び地方公共団体等からなる協議会等により洪水の流域分担計画が策定・公表され」ているものであり、その計画に基づいて「流域の地方公共団体等による貯留・浸透機能を持つ施設の整備、又は宅地開発に伴い設置される流出抑制施設についての条例による義務付け等の流域対策が実施される流域で行うもの」と書いてある。川だけで解決しようとしない流域治水へと誘導する交付金なのだ。
「要件にB/Cは書いていないが、『1以上』を求めている」(国交省治水課)というだけで、どの範囲のB/C情報を出せとも決めていない。裁量の範囲でどうにでもなる。
先述した「川床を掘り下げる以外にないのか」で既報したが、善福寺川には、隣接する武蔵野市の「合流式下水道」の下水管を通して同市に降った大雨が流入する。最大流量は毎秒27m3だ。
改めて向山課長に「協議会による流域分担計画は策定・公表」していないではないかと尋ねると、「島嶼を除く東京都全体で作っている」と言う。東京都全体の計画のどこに善福寺川に流入する武蔵野市の下水の話があるのかと問い続けると、ようやく「東京都総合治水対策協議会」として「神田川流域豪雨対策計画(改定)」を作ったと具体名を聞き出せた。
この計画は2018年に作られていた。しかし、武蔵野市の下水道を巡る協議について尋ねても、「その中に書いてある」(向山課長)と明確な答えは返ってこなかった。
そこで約60ページの計画を読むと、「調整池の整備予定」(下表)が一つ出ているだけだ。B/Cの話も代替案もない。協議の経緯も辿れない。計画策定時に住民が参加した形跡もなく、ただ、そこに善福寺川の「原寺分橋〜関根橋」と書いてある。そして「原寺分橋〜関根橋」までなら、立坑3地点目の「善福寺川緑地」は2018年時点では含まれていない。
つまり、補助金交付の条件として求められる計画には、現在より範囲の狭い「調整池」計画が書き込まれている。単に「調整池」ありきで、今日に至る。