「補助金の種類で公開するB/C情報が違う」?

 B/C情報の出し方が、補助金で左右されるなんてことがあるのか。確かめることにした。

 東京都河川部計画課に問い合わせると、向山公人・中小河川計画担当課長から折り返しの返事が来た。向山課長は、2年前に善福寺川を縦に深く掘り下げる河川改修事業を取材した際は(本連載〈「川床を掘り下げる以外にないのか」善福寺川に見る住民参加型治水の試み〉で既報)、出先の東京都第三建設事務所の工事第二課長だったが、出世して都庁勤務になっていた。

 向山課長は「住民の皆さんが、『石神井川は上流地下調節池の単体でB/Cを出しているじゃないか』と言うが、あれは国の補助金採択要綱で、国と調整した結果」だという。つまり裁量だ。

 では、善福寺川上流地下調節池では、単体のB/Cは求められていないのか尋ねると「そう考えている」と回答が曖昧だ。「社会資本整備総合交付金」の中にある「調節池整備事業」としての申請だというが、その交付金の要件はどこに書いてあるのかと尋ねても、「今、手元にない」と、ラチが開かない。

 そこで、申請を受ける側の国土交通省治水課に尋ねると、課長補佐が電話の向こうで申請されたのは「社会資本整備総合交付金交付要綱」(以下、要綱)でいえば「広域河川改修事業」だと回答。そこには「費用便益比が1以上であるもの」との要件が書いてある。ただし「下流側の事業と組み合わせているので、B/Cの出し方は、流域全体のB/Cでいい」という。これも解釈に過ぎない。

 ところが、翌朝、この説明は間違いだったと課長補佐から電話があった。

「広域河川改修事業」は善福寺川の別の河川改修事業で申請された補助金であり、「善福寺川上流調節池」の方は向山課長が言っていたように「調節池整備事業」向けの補助金だという。