地方大会「一回戦がいきなり決勝戦」
「多極集中」という時の「極」について、考え方は幅広く、合意は未形成である。しかし、東京を相対化するにあたって、政令市や中核市は一つの出発点となろう。中央集権体制を見直し、全国に20ある政令市、62ある中核市へと大幅に権限や財源を移譲することで、北は函館から南は那覇まで日本のあちこちに魅力ある都市がちらばるような分権改革が求められよう。
日本の中央集権体制は明治憲法にさかのぼり、府県や市町村は内務省の出先機関とされた。第二次大戦後は地方自治が認められたが、機関委任事務を通じた国による自治体への関与は残り、国と自治体との関係は上下主従関係であった。
そのような中央集権体制が、地方の中央省庁への従属、自治体における「与党(自民党)」への恭順を生み出してきた。地域の国政選挙区からはとにかく「与党」を選び出し、その与党政治家をパイプにして地方の首長が参勤交代のように永田町に日参する光景が今も行われている。2000年の地方分権一括法によって自治体の自己決定権は増加したが、国と自治体の関係が本当に対等平等になったかは疑わしい。
また、広域行政としての都道府県制度も大きな曲がり角に来ている。「平成の大合併」をはじめ、市区町村が大規模な再編統合を繰り返してきたのに対し、47都道府県は1890年に定められて以来、135年にわたり「驚くべき安定性」(大森彌)を誇ってきた。しかし現在、都道府県単位の行政圏と現実の生活圏や経済圏とが大きく乖離してしまっている。
2024年現在、東京は人口1391万人、鳥取県は人口54万人で、その差は26倍。都道府県を選挙区とする参院選挙では、2016年から島根県と鳥取県、高知県と徳島県において二つの県を一選挙区とする「合区」が作られた。今後、人口が減少する県では、夏の高校野球の地方予選で「一回戦がいきなり決勝戦」ということも現実味をおびてくるという。
人口変動の過程で、県と政令市の逆転現象も生じている。現在、島根や鳥取をはじめ10県が人口100万人以下となっているが、それらは政令市よりも小さく、規模と権限の点において、むしろ基礎自治体が広域自治体に置き換わっているのである。