拡散型の地方創生では立ち行かなくなる

 人口減少下の日本の国土デザインについては、「一極集中」、「多極分散」、「多極集中」という三つのイメージが唱えられており、それぞれの有効性を考えてみたい。

 「一極集中」とは、もちろん東京を中心とする首都圏への人口、税収、情報などの集積である。総務省によれば、2024年において25道府県で人口流出が続く反面、東京は転入超過が8万人に上り、「一極集中」は現在も続いている。

東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の転入超過数の推移(図表:共同通信社)

 もちろん、「一極集中」は、過密と集積によって「規模の経済」が活かせるといったメリットもある。その反面、東京への人口集中と地方の過疎化という国内不均衡が拡大している。とりわけ東京の過密は感染症や災害に弱く、コロナ禍は大都市の脆弱性を浮き彫りにし、首都直下型地震が起きれば日本の中枢機能が麻痺することになる。

「一極集中」の対概念として「多極分散」があり、人口、行政機能、経済活動などを東京から全国に分散させようとするものである。「多極分散」は1987年の第四次全国総合開発計画で示され、石破茂総理が取り組む「地方創生」も基本的にはこの考えに則り、空き家の活用などを通じた東京圏から地方への移住が誘導されてきた。

 しかし、人口減少下における「多極分散」は、これからの国土デザインとしては適当ではない。全国にあまねく人が拡散すれば、いずれ人口の少ない地域における「ポツンと一軒家」の限界集落が増え、水道やガス、電気といった行政サービスの維持が困難になっていくであろう。

 また、あまりに拡散型の国土形成では、民間サービスの商圏維持も困難になる。民間事業者が経営を維持しようとすれば、理容店は1400人、コンビニは3800人、スターバックスは8万人など、その地域での一定の商圏人口が必要になる。しかし、地域の人口が極端に低密度になるとこの商圏を維持できず、事業者の撤退や廃業を余儀なくされるのである(河合雅司)。

 総じて、「一極集中」と「多極分散」とは、ともに人口増加時代の国土デザインの対概念といえる。「一極集中」の是正が必要としても、日本はもはや「多極分散」に耐える地力がないのである。

現実解「多極集中」とは何か

 そこにあって、これからの日本に求められるのは「多極集中」であろう。すなわち、首都圏への「一極集中」を是正しながら、いたずらな人口拡散も抑制しつつ、拠点への一定程度の「集中」を通じて日本全国に多くの「極」を作ろうという考え方である。

「多極集中」によって、マクロで見れば東京一極を相対化しながら、ミクロで見れば住民合意の上で地方拠点都市への一定程度の集住と権能強化を図る。それによって各地域の「拠点」が自治体の行政サービスを維持しながら、民間事業者の経済活動の持続性を確保する。公共政策学者の広井良典によれば、このような「多極集中」、すなわち多極的でありつつ各々の極は集約的であるような都市像こそ、「人口減少社会のデザイン」の基本思想たりえるという。