鄧小平氏の「黒猫でも白猫でもネズミを捕るのはよい猫」に通じる思想

 その一方で、李在明新大統領は、鄧小平氏を髣髴(ほうふつ)させる「実用的市場主義の政府」も謳った。

「朴正煕(パク・チョンヒ)の政策も、金大中(キム・デジュン)の政策も、必要で有用ならば区別なく使う」

 朴正煕氏は軍事独裁の大統領で、金大中氏はそれに対抗した民主化の象徴的存在だ。この言い回しは、鄧小平氏の言葉「黒猫でも白猫でも、ネズミを捕る猫はよい猫だ」に通じるものがある。

 また、『孫子の兵法』をもとにして、北朝鮮への対応についてこう述べた。

「どれほど高くつく平和であっても、戦争よりもマシだ。ケンカして勝つよりもケンカしないで勝つ方がマシだ。ケンカする必要のない平和が、最も確実な安全保障だ」

 おしまいに、16分の演説の端々に、李在明新大統領の日本に対する歴史観が示唆されていたことを付記しておく。

「植民地から解放された国」「(独立運動家の)金九先生の夢がいまや現実のものとなっている」「日帝の暴圧に3・1運動で対抗し、大韓民国臨時政府を樹立した」……。

 李在明新大統領は、果たして「韓国の習近平」なのか、「韓国の鄧小平」なのか。それとも、「韓国のトランプ」か。今後5年にわたり、注視していく必要がある。