演説に滲む、貧しかった生い立ちに根差す世界観
二つ目のキーワードは、「安全」である。李大統領はこう述べた。
「国民の生命と安全、労働者の正当な権利を脅かし、不当に弱者を抑圧し、株価操作のように不公正な取引で市場秩序を脅かすなど、規則を捻じ曲げて利益を得て、規則を守る人たちに被害を与えることは、絶対に容認しない」
安全な社会を作るのはよいことに違いないが、それが行き過ぎると、どこかの大国のように監視社会に向かってしまう。
三つ目のキーワードは、「平等」だ。
「機会と資源の不平等が深化し、格差と両極化が成長を阻害する悪循環が続いている。低成長で機会が減り、共に生きる共生の代わりに、弱肉強食の競争だけが残っている。極端な競争に放り込まれた青年たちが、男女間でケンカする状況となっていた。競争に脱落したら即死する不平等社会が、分断政治とあいまって、社会の存続を脅かす極端主義を生んだ」
このように、李大統領は韓国社会の現実を、厳しい目で見ているのだ。それは、貧困家庭に生まれ育って苦労した自らの半生と重なるからでもあるだろう。
ともあれ、「偉大」「安全」「平等」という3つのキーワードで思い起こすのは、やはり隣の大国・中国を統(す)べる習近平主席である。2023年3月10日に、3期目の政権を発足させた時の習主席の演説が、まさにこれらをキーワードにしていた。