山本は連覇を逃すも「満足感があります」
女子5000mは前回覇者の山本有真(積水化学)が15分16秒86で銅メダルを獲得。連覇を逃したが、「自分の力がついたと実感できる大会になりました」と笑顔を見せた。
今季の山本は4月12日の金栗記念5000mで約2年半ぶりの自己ベストとなる15分12秒97をマーク。5月18日のセイコーゴールデングランプリ3000mでも8分50秒64の自己ベストで日本人トップに輝いている。そしてアジア選手権でさらに“進化”した姿を披露した。
「春の2大会はペースメーカーを務めてくれた田中希実さんの力を借りての自己ベストでした。でも今大会はペースメーカーがいないなか、冷静に対応できて、タイム・順位とも満足いく結果がついてきました。2年前のアジア選手権はレベルが低く、勝てちゃったレースで“やりきれた感”がなかったんです。今回は14分台の選手もいたなかで、自分の力で自己ベストに近いタイムで走れた。前回の金より、今回の銅メダルの方が“満足感”がありますね」
山本は名城大4年時(22年)の国体5000m(15分16秒71)を「最高の走り」と表現していた。積水化学に入社後はフィジカルトレーニングを取り入れて、その成果をようやく感じたという。
「国体と金栗記念の動画を見比べたら、フォームがすごく変わっていたんです。以前は接地で足首がグラついて、腰も反りがちでした。それが腰は後傾しすぎず、腕振りはしなやかで、ピッチも全然違う。フォーム改善ができています」
今年は1~2月に距離を踏んで「土台」を作ると、レース前には新たなメニューを入れてきた。それが好結果につながっているようだ。
「300m+100mを5回繰り返すんですけど、300mをキロ3分ペースぐらいで走り、100mを大きく落とさずに20秒ぐらいで走るんです。トータル2000mのタイムが6分05~10秒ぐらいになる。それを3セットぐらいやって、+1000mでもっと追い込むみたいなメニューです。ヒーヒー言いながらやるんですけど、これよりキツいことはないと思って、レースで頑張れるんです」
アジア選手権で高得点を稼いだ山本は「ワールドランキング(Road to Tokyo)」で東京世界陸上の参加資格を得ることが濃厚になった。あとは日本選手権で「3位以内」を確保すれば代表に選出されることになる。
「日本選手権は東京世界陸上のキップをつかむ大事なレースです。(世界大会で入賞している)田中さんや廣中璃梨佳さんに並ぶような走りをしたいなと思っています」
大会最終日は男子やり投げで﨑山雄太(愛媛県競技力本部)が日本歴代5位の自己記録を更新する83m75で銅メダルを獲得。メダルには届かなかったが、男子800mで石井優吉(ペンシルベニア州立大)が1分46秒74で4位、日本記録保持者の落合晃(駒大)が1分48秒01で5位に入った。
アジア選手権で活躍した選手たちが次に本気でぶつかるのは7月4~6日に東京・国立競技場で行われる日本選手権。東京世界陸上のキップをかけた戦いはいよいよクライマックスを迎えることになる。