「土地は荒れ放題、水源の多くが汚染」
英フィナンシャル・タイムズ紙は3月、ガーナを舞台にした金の違法採掘の記事(『How high gold prices are fueling a chocolate shortage』)を掲載。それによると、世界第2位のカカオ生産国であるガーナの農家は国家が価格を統制しているため、その恩恵にあずかれていない。多くの農家が違法な金採掘業者に農地を売り渡した結果、「土地は荒れ放題となり、水源の多くが汚染されている」と指摘した。
カカオ業界や環境保護団体の抗議にもかかわらず、現地で「ガラムセイ」と呼ばれる違法採掘業者の問題は放置されたままだ。ロイター通信は昨年10月の記事で、ガーナの金生産量は1〜7月で120万トロイオンス(1トロイオンス=約31.1グラム)と23年の総量を超えたと伝えた。
違法採掘業者の多くは金の採取に水銀を使う。掘り出した鉱石に水銀を注ぐと、水銀が金と結びついて合金(アマルガム)ができる。あとは水銀を熱して蒸発させれば金を取り出せる。古くから使われる低コストの金抽出手法だ。
ここで蒸発した水銀は周囲に拡散し、河川などに流れ込む。周辺の環境を破壊するだけでなく、地域住民の健康を脅かす。
こうした問題はアフリカだけでなく、ブラジルなどでも深刻になっている。
ブラジルのソニア・グアジャジャラ先住民族相は昨年2月、日本経済新聞のインタビュー記事で「国際社会には違法鉱物の行方の捜査で協力を求めたい。買い手がいるからこそ、違法採掘が続く。労働者だけでなく、金を輸出している企業、買い手を追跡しなければならない。罰則を与える必要もある。違法採掘の結果、環境破壊、先住民の健康悪化がもたらされている」と話した。