松本がトラブルを回避して金メダル
女子400mは松本奈菜子(東邦銀行)が絶好調だった。予選をセカンドベストの52秒24でトップ通過すると、決勝でも“素晴らしい走り”を見せた。
6レーンの松本は前半こそ遅れたが、後半に追い上げる。そして最後の直線。前を走っていた7レーンのUAE選手が誤って6レーンに侵入。狭くなったレーンのなかで松本が“神業レベル”の追い抜きを披露して、真っ先にゴールへ飛び込んだ。優勝タイムは52秒17。日本勢では16年ぶりの栄冠に輝いた。
「予選の感触が良かったので、決勝もレースの再現性を求めて走りました。もう少しタイムが出るかなという内容だったんですけど、横のレーンの方が入ってこられて、ビックリしちゃったところがあったんです。内側の白線を踏むと失格になるので、そこに気をつけながら、うまく抜くことができました。52秒1台での優勝は自信になったと思います」
信じられないようなトラブルをうまく回避した松本。ハプニングさえなければ日本歴代2位の自己ベスト(52秒14)の更新は確実な状況だっただけに、「惜しかった」と残念がった。
松本は静岡・浜松市立高3年時(14年)の日本選手権400mを制して、注目を浴びた選手。一昨年、昨年と左脚に故障が続いたなかで“転機”があったという。
「昨季の前半で左ハムストリングスを肉離れしたのをキッカケに夏に走り方を変えたんです。左脚は(地面を)ペロンと引っかいて(後ろに)流れてしまう癖があったので、なるべく地面からの反発をもらうかたちで脚を高い位置に持ってこられるように意識してきました。2か月半ぐらい徹底したことで秋に自己ベストが出て、今季も52秒台でまとめられるレースができています」
昨年9月に従来の自己ベスト(52秒56)を更新する52秒29をマークすると、今季は静岡国際で52秒14までタイムを短縮。51秒台は目前で、日本記録(51秒75)も視野に入ってきた。
「静岡国際は前半でガンッと行って、後半たれちゃうレース展開で、木南記念(52秒88)は落ち着いて入ったのに、ペースを上げることができませんでした。今回のアジア選手権は練習してきた200~300mの切り替えがうまくいった分、タイムが出たのかなと思います。51秒台や日本記録を出したいですし、近づいている感じもある。今年は東京世界陸上があるので、マイルリレーだけでなく、個人でも世界と戦いたいです」
静岡国際で日本記録を上回る51秒71を叩き出したフロレス・アリエ(日体大)が日本国籍を申請中。日本選手権の女子400mは松本とフロレスの激突で“好記録ラッシュ”が巻き起こるかもしれない。