「通信の秘密」は守られるか

「能動的サイバー防御」関連法の国会審議では、課題も浮き彫りになりました。

 1つは、「通信の秘密」との兼ね合いです。日本国憲法は「通信の秘密は、これを侵してはならない」(第21条2項)として、国民に広く通信の秘密を保障しています。ところが、能動的サイバー防御が稼働すると、政府(具体的には警察や自衛隊)が常時、メールなどの通信を監視することになるため、個人のプライバシーが侵害されるのではないかとの懸念が表明されました。

 実際、多くの国民がこの点に不安を感じているようです。NHKが4月に実施した世論調査によると、能動的サイバー防御法案に全体で4分の1ほどだった「反対」のうち、「『通信の秘密』の権利が侵害されると思うから」を理由に挙げた人は41%に達していました。

 こうした懸念に対し、国会では野党の提案で法案が修正され、憲法の規定を尊重する規定などが法律に追加されました。

 一方で政府は、監視対象となるのは「外国から日本国内への通信」「日本から外国への通信」「日本を経由する外国同士の通信」であり、国内間の通信は対象にならないと強調。そのうえで、メールの件名や本文、添付ファイル、ウェブサイトに掲載した文章や画像など「コミュニケーションの本質的な内容」に当たる部分は、分析対象にしないと説明しています。さらに、政府の恣意的な運用を避けるため、行政から独立した第三者機関の「サイバー通信情報監理委員会」を新設。運用の状況をチェックすることにしています。