ドイツと日本、どちらのほうが生産性は上なのか?

 日本の一人当たりGDPは2012年までドイツを上回っていたが、その後はドイツに劣るようになった。2023年時点の日本の一人当たりGDPは約3万4000米ドルと、ドイツ(約5万4000米ドル)の6割だ(図表1)。

【図表1 ドイツと日本の一人当たりGDP】

(出所)世界銀行

 米ドル建て一人当たりGDPだけで評価すると、ドイツの労働生産性は順調に改善している。もっとも、自国通貨建ての一人当たりGDPで労働生産性を議論すると、また違った絵姿が見えてくる(図表2)。

【図表2 各国通貨建て一人当たりGDP】

(出所)世銀

 2010年を基準(=100)とすると、2023年時点におけるドイツの自国通貨建て一人当たりGDPは名目ベースで157に達している。それに対して、日本の場合は120であり、いかにも見劣りする。

 一方、物価変動の影響を除いた実質ベースで見ると、ドイツが115なのに対して日本は112だ。2011年に第4次産業革命(インダストリー4.0)を標榜し、生産性の改善を謳ったドイツだったが、生産性の改善度合いについては、日本との間で強調するに値するほどの差はない。

 それ以上の問題は、コロナショック後の改善テンポにある。

 実質ゼロ成長が続いたドイツの生産性は、2022年、2023年とほとんど改善しておらず、コロナ前のピークである2019年の水準程度である。対照的に、日本の生産性は緩やかながら改善が進み、2023年の水準はコロナ前のピークである2018年の水準(110)を上回っている。

 2024年の成長率はドイツが0.2%減、日本が0.1%増と、両国ともほとんど横ばいだ。極端な人口変動もないから、実質ベースの労働生産性のトレンドに変化はないだろう。日本の生産性の改善は遅れていると指摘されるが、実質ベースの自国通貨建て一人当たりGDPで評価すれば緩やかながらも改善しており、ドイツに劣るわけではない。