派遣社員の存在が「金もうけの道具」と化している実情

 次に、売り上げや利益優先でヒトがモノになりがちである点です。労働者派遣を巡っては、ここ数年の間にもさまざまな望ましくない報道がされています。地方自治体から事業受託した派遣事業者が人件費を重複して計上するなどして過大請求した事件や、消費税の脱税、雇用調整助成金の不正受給など。

 派遣事業の売り上げは、派遣社員の人数と労働時間の長さに比例します。そのため派遣社員をできる限り辞めさせず、長くたくさん働かせられるほど売り上げや利益が上がるという考え方に陥りがちです。結果、派遣社員の存在が金もうけの道具と化してしまいます。

 不本意型派遣社員に対して紹介予定派遣で働く人の比率が低すぎる背景に、できる限り派遣社員として働いていて欲しいという思惑があるとしたら最悪です。

 派遣社員と派遣先双方の希望に応えようと活動するのではなく、派遣社員を売り上げや利益の手段としか考えない派遣事業者であれば、あえて紹介予定派遣を避けたり不正行為を起こしたりしても不思議ではありません。

 また、派遣社員の不安定性に見合った賃金相場になっていないという課題もあります。それが3点目です。3カ月更新など有期雇用の派遣社員の場合、更新のたびに契約終了する不安があります。

 非正規社員全体にも言えることですが、雇用の不安定さというリスクを負っている分、派遣社員の時給は高く設定されてしかるべきだと思います。同一労働同一賃金と言いますが、正社員と同じ仕事をしていて業務に対する責任なども同等な場合、派遣社員の時給は安定雇用が保証されている正社員よりも高くてよいはずです。

 労働者派遣法の整備が不十分で、派遣サービスを利用しにくいことが4点目の課題です。労働者派遣はルールがややこしく、業務取扱要領の分量は500ページを超えます。

 また、30日以内の日雇い派遣などは象徴的で、世界中で日本だけが原則禁止にしている一方で、世帯年収500万円以上ならば利用できるといった不可解な例外が設けられています。収入を増やしたくても世帯年収500万円未満だと日雇い派遣を利用できないという、働き手のニーズとはあべこべの規制が10年以上も見直されないままです。