懸念の中心にあるのは、中国からの輸入品に対する関税だ。アンディ・ジャシーCEO自らアナリストに対し「関税が最終的にどうなるか、いつになるか誰も正確には分からない」と述べ、不確実性を認めた。アマゾンのEC売上高の6割超は外部出品者によるものであり、その多くは、中国から商品を仕入れている。対中関税は価格上昇につながり、事業への影響が避けられない。
このリスクに対し、同社は対策を進めている。ブライアン・オルサフスキーCFO(最高財務責任者)は「様々なシナリオに備えている」とし、関税導入を見越した在庫の積み増しを行ったことを明らかにした。利益率維持のため、外部出品者の価格設定管理や、豊富な品ぞろえを生かして消費者が低価格な代替ブランドを選べるようにする戦略などが取られている模様だ。ジャシーCEOは「特定のカテゴリーで、関税影響を見越した買いだめの可能性を示す動き」にも言及した。
○AWS、市場の期待に届かず 営業利益はアマゾン全体の6割
アマゾンの収益の柱であるクラウドコンピューティング事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の業績も注目された。1~3月期の売上高は前年同期比17%の292億6700万ドルと、成長を維持したものの、市場の期待にはわずかに届かなかった。これは、競合の米マイクロソフトが予想を上回るクラウド事業の成長を示したこととも比較され、一部アナリストに懸念を与えた。AWSはこれまでEC事業の変動を補う安定収益源としての役割が大きかっただけに、今後の成長ペースが重要な焦点となる。
(参考・関連記事)「マイクロソフト・メタ、共に増収増益 市場懸念払拭し底堅さ示す 1~3月期決算 | JBpress」
ただ、AWSの増収率は前年同期と同水準を維持した。加えて、その営業利益は23%増の115億4700万ドルだった。同事業の売上高はアマゾン全体の19%にとどまるが、営業利益は全体の63%を占める。1~3月期の営業利益率は39%だった。
その一方で、データセンター増強などAI関連投資がかさみ、1~3月期の設備投資額は前年同期比68%増の250億1900万ドルに達した。
○アマゾン成長持続へ、不透明要因の克服が鍵
アマゾンの2025年1~3月期決算は好調な内容だったものの、関税リスクという不透明な外部要因が市場の懸念を招く結果となった。
同社が関税の影響や関連する経済の先行き懸念をいかに克服し、主力のEC事業と成長エンジンのAWS事業双方で持続的な成長を達成できるかが、今後の課題となる。
サプライヤーや外部出品者との関係構築、価格戦略のかじ取り、そしてマイクロソフトなどとの競争が激化するクラウド市場での戦略展開などが、引き続きウォール街で厳しく評価されることになる。
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アップル、アマゾンともに直近の決算では市場予想を上回る底堅さを見せたが、米中対立や関税リスクという共通の課題に直面している。アップルはサプライチェーン再編と中国市場での苦戦、法規制リスクへの対応が急務となる一方、アマゾンは関税による影響の吸収とAWSの成長維持、競争激化への備えが求められる。両巨大IT企業がこれらの不確実性を乗り越え、持続的な成長軌道を維持できるか、その戦略と実行力が問われる局面が続く。