K-カルチャー、どこまで勢いがあるのか

 期待の星はウェブトゥーンである。ウェブトゥーンという言葉は、ウェブとカートゥーン(漫画)を合成した造語で、ウェブ上で読める電子漫画のことだ。1999年に韓国で初めて用いられたとされ、最近ではスマートフォンが主流となっている。

 人気が出はじめたのが10年ほど前で、現在の韓国では、私の勤務先をはじめ、“ウェブトゥーン科”が設置されている大学も少なくなく、国をあげて人材育成に取り組んでいる。学科の新設には当然ながら、日本の文科省にあたる教育部の認可が必要で、ウェブトゥーン業界の発展と世界への発信は、いわば国策として5年ほど前から力が注がれている。

 この分野はこの10年間に年30%の成長を遂げてきた。講談社のデータによれば、2022年に韓国ウェブトゥーンの市場規模は世界での日本漫画の市場規模の3分の1程度にまで達している。今後は成長速度は鈍化していくものの、それでも2032年までの平均成長率は16.9%と予測されている。

 ネットフリックスで配信された韓国で制作された「イカゲーム」に代表されるK-ドラマも輸出が盛況だ。2023年の輸出額は19年の2倍にまで成長した。その大きな要因は東南アジアへの輸出が急増したためだと報じられている。

 K-ビューティーといえば美容整形と化粧品が代表例になる。特に、美容整形で世界トップを走る韓国は、2018年には市場規模が全世界の25%に達した。尹政権時代に医学部定員増の政策がとられたとき、医療関係者や医学部生が大反対したが、その理由に挙げられたのが、定員を増やしたところで、収入の良い美容整形医が増えるだけというものだった。皮肉に思えるかもしれないが、それだけ成長の見込みがあるとも読み取れる。

韓国の美容クリニックの広告(写真:西村尚己/アフロ)

 化粧品の輸出で韓国はフランス、アメリカに次いで世界第3位である。最大の輸出先は中国で、アメリカ、日本と続く。食品医薬品安全処のデータによれば、総輸出額は22年に一時期落ち込んだものの、その後再び増加に転じており、昨年は一昨年に対して20.6%増加した。ハナ証券による化粧品輸出額の増加率に関する調査によると、今年に入ってから対欧州では堅調なものの、対日では伸び悩んでいて人気に陰りが見えはじめ、対米では急落している。

 これまで人気を博してきたK-ポップは、一昨年ごろから頭打ちである。聯合ニュースは今年1月に、アルバム輸出額の異変について報じている。2019年に7500万ドル、20年には1億3600万ドル、21年には2億3100万ドルと急増していた。ところが昨年1年間のアルバム輸出額は2億9200万ドルで前年比0.55%の増加にとどまり、実質「ゼロ成長」だと指摘。なかでも、最大の輸出先である日本では24.7%減であった。

 また、New Jeansと所属事務所であるハイブとの軋轢をはじめ、トラブルが度重なっているために、K-ポップのイメージダウンは否めない。となると、日本をはじめとしてある程度のK-ポップ離れが予想される。

 このように、ジャンルによって勢いは異なり、必ずしも急成長が見込めるものばかりではないのが現状だ。それでも李在明氏が文化産業の急成長を経済政策に掲げられるのは、中国の存在があるからである。