超新星が近くで爆発したら
超新星が地球の近くで爆発したら何が起きるでしょうか。
超新星はさまざまな危険物を周囲に巻き散らかしますが、そのうちガンマ線と粒子線は地球のオゾン層を破壊します。すると紫外線がばちばちに増えて、地表の生命を焼灼(しょうしゃく)します。
紫外線は生物のDNAを傷つけます。生物は紫外線によって火傷を負い、傷が治らずに死んでいきます。DNAの損傷は不妊や成長不良を引き起こし、子孫を残すことが困難になります。動物は日陰に隠れることができても、植物は隠れることができません。植物が全滅すれば動物も飢え死にです。(ただし海中の生物は直接の影響が少ないかもしれません。)
どれほど影響を与えるかは、超新星の規模や距離、それから地球から見た方向によります。南十字星の方向で起きた超新星は、北半球にはさほど影響を与えないかもしれません。
ある見積もりによると、60光年以内の超新星は大絶滅をもたらす可能性があります。
3000光年以内の星の人口調査
2025年3月15日、英国キール大学の研究者グループが、近隣3000光年以内のO型星とB型星の「人口調査」を行なったと発表しました(※2)。「O型」と「B型」というのは(血液型ではなく)恒星の種類を示していて、どちらも超新星爆発を起こす質量の大きなタイプです。他にG型、K型、M型などがあり、私たちの太陽はG型星です。
調査には「ガイア衛星」のデータが用いられました。ガイア衛星は天の川銀河の地図を作る目的でヨーロッパ宇宙機関が2013年に打ち上げた衛星で、公開されたデータは18億個の恒星をふくむ凄まじいものです。
調査の結果、3000光年以内の2万4706個のO型星とB型星がみつかりました。両者合わせて「OB型星」と呼ぶことにしましょう。この結果から、3000光年以内で超新星が弾ける率は100万年に15〜30発と推定されます。天の川銀河全体だと200〜250年に1発となり、これまでの推定よりちょっと少なめです。
するといよいよ今回の本題ですが、太陽系から60光年以内で超新星が弾ける率は、2億5000万年に1発と見積もられます。
ということは、過去5億年間に、近くで超新星がおそらく2発くらいは弾けたと推測されます。1回も起きなかった確率はたったの14%です。86%の確率で、1発以上の超新星が発生しています。
そういう目で過去のビッグファイブ大絶滅を見直すと、4億4400万年前のオルドビス紀末と3億7200万年前のデボン紀後期の大絶滅は、なんだか超新星の被害を思わせる特徴があります。
オルドビス紀末とデボン紀後期の大絶滅は、(短期間で起きた恐竜の絶滅と違って)30万年程度の長期間かかったと考えられています。
オルドビス紀末にはあらゆる生物種の85%が絶滅しました。多彩だった海洋生物の種類は貧弱になりました。
デボン紀後期には、甲冑魚(かっちゅうぎょ)、三葉虫、アンモナイトなどの動物や多くの植物が絶滅し、すべての生物種の82%が絶滅しました。特に赤道地域で被害が大きかったと見られています。
大絶滅の原因を特定するのは、なにしろ大昔のことなので難しいのですが、近隣の超新星爆発は、月や小惑星に鉄60という同位体を残します。これを調べることで、超新星爆発が近くで起きたかどうか分かるかもしれません。あるいはガンマ線バーストや中性子星衝突といった、大絶滅を引き起こす別の宇宙的災害の証拠が見つかるかもしれません。
今後の宇宙古生物学の進展に期待します。