著名な建築家が設計した14邸宅

さて、展覧会会場へ。展覧会では著名な建築家たちが1920~70年代に手がけた14邸をピックアップ。それぞれの邸宅が模型を中心に、写真、図面、スケッチ、家具、テキスタイル、食器、映像などを用いて多角的に紹介されている。
ユニークなのは会場のつくり方。各邸宅の展示を区切られたスペースで行うのではなく、全体が見渡せるだだっ広いフロアに邸宅ごとのテーブルを設置。各テーブルを一周すると、「衛生」「窓」「調度」「メディア」「素材」「キッチン」「ランドスケープ」という7つの観点から、建築家がその住宅づくりで「何を実験したかったのか」が見えてくる。
14邸宅はいずれも名建築として名を残すものばかり。年代順に記しておく。
①ル・コルビュジエ「ヴィラ・ル・ラク」(1923年)
②藤井厚二「聴竹居」(1928年)
③ミース・ファン・デル・ローエ「トゥーゲントハット邸」(1930年)
④ピエール・シャロー「ガラスの家」(1932年)
⑤土浦亀城「土浦亀城邸」(1935年)
⑥リナ・ボ・バルディ「ガラスの家」(1951年)
⑦広瀬鎌二「SH-1」(1953年)
⑧アルヴァ・アアルト「ムーラッツァロの実験住宅」(1953年)
⑨ジャン・プルーヴェ「ナンシーの家」(1954年)
⑩エーロ・サーリネン&アレキサンダー・ジラード&ダン・カイリー「ミラー邸」(1957年)
⑪菊竹清訓&菊竹紀枝「スカイハウス」(1958年)
⑫ピエール・コーニッグ「ケース・スタディ・ハウス #22」(1959年)
⑬ルイス・カーン 「フィッシャー邸」(1967年)
⑭フランク・ゲーリー「フランク&ベルタ・ゲーリー邸」(1978年)
建築家が実践した斬新なアイデア

これらの邸宅の中から、建築家が行った実験や新たな試みをいくつか紹介したい。①ル・コルビュジエ「ヴィラ・ル・ラク」は、彼が両親のためにスイスのレマン湖畔に建てた小さな住宅。技術の進歩により大きな窓を作ることができるようになったことから、11メートルに及ぶ横長の水平窓を設置。「家の中に風景を取り込む」という今では当たり前の考え方を世に広めた。
④ピエール・シャロー「ガラスの家」は、古いアパートの一面の壁を取り外し、ガラスブロックで覆うことにより、「光あふれる空間」という夢を実現した。現代風に言うと、「大胆なリノベーション」というところだろう。
⑨ジャン・プルーヴェ「ナンシーの家」はありあわせの材料で組み上げた家。プルーヴェはかつて部品工場を営んでおり、工場には様々な材料が残されていた。そうした“余りもの”を利用して、仲間や家族とともに自邸を建設。コンクリート、ガラス、金属板、木板、アルミ製パネル……。さまざまな材料でできた家には「素材への深い理解が形態を生み出す」というプルーヴェの信念が表れている。
⑪菊竹清訓&菊竹紀枝「スカイハウス」は、住人の生活の変化に合わせて、建築も生き物のように成長したり変化したりする必要があるという「メタボリズム」の考え方に基づいて設計。地面から浮かぶように建物がつくられ、キッチンや子供部屋は「ムーブネット」という付け外しができる仕組みになっている。