実践!藤原流アクティブラーニング
藤原:さて、残り時間も少なくなってきたので、せっかくだから7分間だけアクティブラーニングをやってみましょう。
普段、学校でやっている「正解を早く正確に当てる」という教育は情報の「処理力」を問うているわけです。これからやるのは情報の「編集力」。正解のない課題に対してどれだけ仮説を出せるか。他人の脳と繋がって、異質な情報の掛け算で、納得できる仮説をクリエイトしてください。
では一問目。お掃除ロボットを家で使っている人?
はい、まあまあいますね。そのお掃除ロボットが2030年にどんなふうに進化しているか。脳のリミッターを外してください。開発コストとか開発期間とか関係ない。壁を駆け上ったって、空を飛んだっていい。要はバカな意見の言い合いです。
3人から5人でチームになってブレスしてください、はいどうぞ!
(ガヤガヤ)
はい、そこまで。処理脳から編集脳に切り替わってきましたか?
では二問目。世の中にある「白い商品」をたくさん挙げてください。いっぱいありますよね。10個くらいはすぐ出てくる。できれば20個くらい挙げられたらいいですね。1分半で、はいどうぞ!
(ガヤガヤ)
はい、そこまで。ではその中で黒にしたら絶対に売れるものを考えてください。これ、実際にありますよね。マスクとか、黒いまな板とか黒い綿棒ってのもあります。
(ガヤガヤ)
はい、そこまで。では三問目。今度は二人一組になってください。15秒の自分プレゼンで相手の意識を掴んでください。笑ってもらえたらもっといいです。誰かに似ているとか、難しい名前だとか、面白いルーツだとか。僕の場合は「教育界のさだまさしです」でOK。
(会場爆笑)
はい、どうぞ!
(ガヤガヤ)
はいおしまい。これは相手に警戒を解いてもらう作業です。野生動物の場合、味方でなければ敵なので襲いかかるか逃げるかですが、人間の場合、話をして、脳と脳をつなぐことができます。みなさん、安易に名刺を出しすぎなんですね。会社ブランドではなく自分ブランドで勝負する、ということを覚えた方がいいです。
では最後。今の二人で、お互いの共通点を探してください。嬉しくなっちゃうような共通点だといいですね。例えば、卒業した小学校が同じだったら、すごい。離婚した同士なら、このあと飲みに行っていただければ。
どうぞ!
(ガヤガヤ)
はい、終わりでーす。
(共通点探しの大興奮が収まらない会場)
はい、時間ですから終わりにしてください。
これがコミュニケーションの基本です。ほとんどの人は、会話の隙間にちょいちょい自分の話を入れてきますが、これは独り言の応酬でコニュニケーションにはなりません。

営業をやっている時、売れなくなったセールスマンには「売るな」と教えます。その代わり、相手との共通点を探してこい、と。コミュニケーションの基本に立ち返る、一種のリハビリなんです。
大西:ありがとうございました。すっかり藤原さんに場を持っていかれましたが、一応、申し上げおくと、今回のイベントは文庫版『起業の天才!江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』が新潮社さんから発刊されたことを記念したものであります。
藤原:ええー!そうだったの。ウソ、ウソ。みなさん、いい本ですよー!
大西:最後にまとめなきゃいけないので。よのなか科を生み出した教育改革実践家の藤原さんと、リクルート伝説の営業マンだった藤原さんは、どこでどうつながっているのでしょうか?
藤原:僕がいまやっている教育改革は、日本の正解至上主義を壊すことです。それでも、正解至上主義はきっとなくならないんでしょうけど、今97%くらいの比率を70%に下げ、ブレストやディベートを増やしていく。これで日本も少しは変わるのでは、と。この活動は起業してもマネタイズできないので、江副さんはきっとやらなかったでしょう。
江副さんとは違う形で社会改革ができるのではないかと考えています。
大西 康之 (おおにし やすゆき)
1965(昭和40)年生れ。愛知県出身。1988年、早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。1998(平成10)年、欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員を経て2016年に独立。著書に『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』『流山がすごい』『起業の天才! 江副浩正8兆円企業リクルートをつくった男』『三洋電機 井植敏の告白』『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』などがある。