ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領。和平交渉を巡り激しい口論となった=2月28日(写真:ロイター=共同)

トランプ米大統領が、ロシアの侵攻を受けるウクライナの停戦問題を巡り、極端な動きを見せている。ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ氏との会談は、まさかの口論に発展し、決裂した。怒りの収まらないトランプ氏はウクライナへの軍事支援を一時停止。その一方で、プーチン露大統領との会談には意欲的とされ、米ロの急接近も囁かれる。

こうした中で、欧州連合(EU)がウクライナ軍事支援のさらなる強化と、ロシアへの追加制裁に取り組む方針を明らかにするなど、米欧の亀裂も表面化してきている。混迷する国際社会において、日本はどう動くべきなのか。“石破外交”のキーマンであり、外交・安全保障政策を担当する長島昭久首相補佐官(64)に話を聞いた。(取材は3月4日/前後編の前編)

(河野 嘉誠:ジャーナリスト)

決裂は「非常に深刻」だが、長期的には…

──ケンカ別れになったトランプ氏とゼレンスキー氏の会談をどう見る?

長島昭久首相補佐官(以下、長島):あえて「短期的には」と断りを入れた上ではありますが、非常に深刻な事態です。戦争当事国と最大の支援国との間に、亀裂が生じている。しかも、ウクライナの問題をめぐり、ヨーロッパにおいてもアメリカに対する懸念が広がってきているわけですから。

──2月中旬のミュンヘン安全保障会議でも、バンス米副大統領がSNS規制などを巡り、「検閲」「民主主義の破壊」などと発言し、西欧民主主義を攻撃した。

長島:ヨーロッパからすると、米国とともにこれまで築いてきた同盟国としての特別な関係を、否定するような発言に映るわけです。そうした中で、今回のトランプさんとゼレンスキーさんのことがあった。短期的には非常に難しい状況ではあります。

 ゼレンスキーさんにとっては、アメリカにウクライナの安全保障を担保してもらうことは、絶対に譲れない点だと思います。米ロが接近するような状況は、さすがに受け入れることはできない。会談では必死にそう主張したんだけれども、結果的には裏目に出てしまった。

 協定にも署名できず、短期的には支援の取り付けも困難になってしまいました。

──とはいえ、ゼレンスキー大統領はトランプ大統領との再交渉に動いている。

長島:先ほどあえて「短期的には」深刻だと語りましたが、中長期的には、国際社会のパワーバランスをリアリアズムの立場から考えるとすれば、アメリカの支援なくしてヨーロッパの平和はないし、ウクライナの平和もないこともまた事実なわけです。その意味では、結局はアメリカが提案する停戦の方向に話が進んでいくのだろうと。

 和平案については、ヨーロッパも提案をまとめています。たとえば、ヨーロッパ側が平和維持のための部隊をウクライナに出すのかどうかも含めて、トランプ政権との間でどういう調整がこれから行われるかを見極めなければいけません。