食材インフレ、光熱費・人件費高騰が続く中で懸念される「無償化リスク」

 学校給食の無償化に当たって、財源はどのくらい必要になるのか。

 文科省の調査によると、公立学校の学校給食費(食材費に相当する金額)の推計は、小学校が約3019億円、中学校が約1675億円、義務教育学校約38億円などトータルで約4826億円と弾いている。ざっくり5000億円と見積もると、高校授業料無償化とほぼ同規模である。

 ただし、この推計は数年前の調査時点のもので、輸入食品からコメに至るまであらゆる食材や光熱費、人件費が高騰している現在においては少なくとも1.5倍には膨れ上がっているのではないか。

 食品だけを見ても消費者物価指数は2020年を100とすると2024年は122.5となっている。光熱費などを加えれば1.5倍というのも低めかもしれない。つまり、現時点で学校給食無償化にあたって必要な財源は食材費だけでも5000億円の1.5倍、7500億円は必要となるとみた方がいい。

 これは今後の国際情勢、国内での生産動向次第では、さらに跳ね上がる可能性がある。その恒久財源をどうやって調達するのか。自民、公明、維新の3党は責任を持って財源論を明確にすべきである。新たな増税につながっていくのか。それとも歳出の大幅な見直し・削減で調達できるのか。膨れ上がる一方の防衛費の一部を回せばすぐに手当てできるのだが。

給食無償化について5月に具体的な制度設計をまとめる方針を確認した自民、公明、日本維新の会の政調会長ら(写真:共同通信社)

 次に危惧されるのは、決められた予算内で一定以上の給食の質が保証できるのかどうかである。

 食用油、コメ、野菜などの価格高騰で多くの自治体で学校給食費の値上げを検討する動きが出ている。長野県内のある中学校では、肉や魚を単品で出さず、カットして他の食材と合わせたり、大豆食品と置き換えたり、揚げ物の回数を減らしたりしてやりくりしているという。それでも限界があり、長野県内では19市のうち14市が給食費を値上げする方針だという(FNNプライムオンライン2月28日配信より)。

 無償化になったら、給食費を上げることはできない。国の予算は年間で決まっているから、学校側はその予算内で献立を考え、給食を作らなくてはならない。そうなると、食材の質低下やメニュー減少という懸念がつきまとう。あるいは食材費不足の見込み分を自治体が補助する事態になるのだろうか。

 食材インフレ、光熱費・人件費高騰が続く状況が見込まれる中での無償化政策は、どうやってもリスクがつきまとう。