F1を企業のマーケティングに活用してもらう
まず、B2Bについては、日本企業のビジネスの一環としてF1日本グランプリの活用を促す。マーケティングやホスピタリティ、そしてビジネスマッチングなどで活用してもらおうというのだ。この事業は、鈴鹿サーキットなどを運営するホンダモビリティランドが手掛ける。
海外企業の事例では、ルイヴィトン、ティファニー、モエ・エ・シャンドン、タグ・ホイヤーなどの高級ブランドを手掛けるLVMHグループがF1と10年間のパートナーシップを締結するなど、自動車産業以外の企業との連携が盛んになっている。
こうしたビジネスのトレンドを理解してもらうために、今年のF1日本グランプリ開催中の4月4日に「ビジネスカンファレンス」を開催する。約100社が参加する予定だ。
ホンダによれば、F1日本グランプリ観客動員数は2024年が22.9万人。そのうち22%の5万人が海外からの来場者であるため、海外企業との交流の場として日本F1グランプリの活用が考えられる。
B2Cについては、F1日本グランプリ開催地の鈴鹿まで足を運べない人のために、東京・台場地区で「F1 東京ファンフェスティバル」を4月2、4、5、6日の4日間開催する。
F1デモ走行、音楽ライブ、F1開催国の料理提供コーナー、そしてF1日本グランプリのパブリックビューイングなど、広い世代が気軽にF1に触れる機会を創出する。
F1シリーズ全体でみると、ファンの平均年齢は37歳であるのに対して、日本グランプリでは48歳と高い。日本では、80〜90年代のF1ブームからのファンが主体であり、今後は女性や若い世代の認知度を向上させる戦略を進める。
もうひとつ、視点を変えたB2C事業として「メモラビリア」と呼ぶ事業を4月に始める。過去のF1マシンのスペアエンジンの部品などを販売する。

関係者によれば、かなり高額なものからリーズナブルな価格設定のものまで各種取り揃える予定という。
高額品の一例としては、アイルトン・セナ選手が1990年に参戦したマクラーレン・ホンダMP4/5Bに搭載したV型10気筒エンジン「RA100E」の部品などがある。ホンダの四輪・二輪モータースポーツ事業の統括企業であるホンダレーシング社の証明書付きだ。
こうしたホンダのF1日本グランプリに対する各種戦略の説明を聞いて、モータースポーツは技術分野だけではなく、「人とクルマ」との関係性を大きく変える可能性を感じた。
桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
◎Wikipedia