ニューヨークで感じたアゲンスト(その2、その3)

 第二に、関税インフレである。

 トランプ氏は「関税ほど美しい言葉はない」と発言している。しかし、経済学的に見れば、「関税ほど経済をゆがめ、経済を非効率化するものはない」である(発展途上の経済における産業保護などは除く)。

 関税の結果、輸入製品の価格が上がる。輸入業者が負担し、最終的には消費者に転嫁される。結果として、インフレにつながってしまう。

 また、高関税の結果、本来は淘汰されるべき非効率な産業が残ることもある。

 米国への投資が雇用拡大につながるには、時間がかかる。それよりも前にインフレが起きるのではないか。

 第三に、さらなる減税への期待のとん挫である。

 第1次トランプ政権の2017年に成立した減税は、2025年12月で期限が終了する。そのため、延長するための法案が2月25日に下院で議決された。しかし、この額では従来の減税を延長するのみである。

 今回トランプ氏に投票した人の中には、「減税の感動をもう一度」という人も少なくない。期待値の上がる中で、これ以上の減税には、財源が足りない。

 共和党には、財政規律を重んじる議員も多く、特に共和党と民主党が拮抗する下院ではこれ以上の財政措置は困難が予想される。

「ええっ、減税こそ期待していたのに」というため息が聞こえる日も近い。減税が打ち出の小槌ではなくなったのだ。