日本はカメレオン政権にどう向き合う?

 李在明氏が大統領に就任すれば、朝鮮半島をめぐるこのような国際関係のなかで、対日政策が揺れ動くことになる。李氏としてはトランプ大統領との関係構築に失敗すれば、経済への悪影響は避けられない。それは支持率低下をもたらし、レームダック化を早めてしまう。そのため、米韓関係と中韓関係のバランスを取るという綱渡りが要求される。

 そうした状況のなかで、日本への歴史問題が意味をもつ。韓国社会で徴用工問題、慰安婦問題はもちろん、処理水放出への拒否感が強いのは、歴史問題が解決されないことへの日本に対する不信感に由来するところもある。

 そうである以上、李在明氏が次期大統領になった場合、ある時は日本愛を語って対中国での日韓連携を示しつつアメリカに接近し、またあるときは歴史問題を国内で取り上げて反日を醸成しつつ中国との関係を深めようとするのだろう。

 まさに親日と反日をご都合主義で使い分けられるのだ。そうなると、日韓関係はこれまで以上に厄介であろう。

 廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権や文在寅(ムン・ジェイン)政権の場合、反日で一貫していた。そうした韓国の政権に対するノウハウは、日本には蓄積されているはずである。その一方で、親日と反日を自由自在に使い分けるような“カメレオン”政権に対して、日本はどう向き合えばよいのだろうか。

 弾劾をめぐる韓国の政界の動きには、目が離せない。

平井 敏晴(ひらい・としはる)
1969年、栃木県足利市生まれ。金沢大学理学部卒業後、東京都立大学大学院でドイツ文学を研究し、韓国に渡る。専門は、日韓を中心とする東アジアの文化精神史。漢陽女子大学助教授。