戦中・戦後の写真作品に見入る

「おかえり、ヨコハマ」展示風景。常盤とよ子《路上》1954年(1988年のプリント) 横浜美術館蔵

 強く印象に残った出品作として、写真家・常盤とよ子の写真作品を挙げたい。敗戦後、横浜には米軍兵を慰安する施設が次々に生まれた。真金町(永真)遊廓、本牧のチャブ屋街、野毛山プールでは女子プロレスが開催されている。さらに赤線地域で生きる街娼たち。混沌とする時代を生き抜いた女性の姿が克明に記録されている。

 もうひとつ、写真家・奥村泰宏による写真シリーズ「聖母愛児園の園児たち」(1952年)にも心を打たれた。戦後占領期の横浜に駐留した占領軍兵士のなかには、日本人女性と交際する者もあり、多数の子供が誕生した。だが、多くの兵士は子供の養育を放棄して本国に帰国。日本の人々も混血の子供たちを冷遇したという。母親は一人で育てることができず、子供は街に捨てられ、命を落とした。

 こうした子供たちの保護に尽力したのが1946年に設立された中区山手町の聖母愛児園。海外から来たカトリックのシスターたちによって運営され、捨てられて半死半生の状態で保護された子供たちを献身的に看護し、多くの命を救った。写真家・奥村泰宏のカメラに向かってあどけない笑顔を見せる子供たち。いろいろなことを考えさせられる。

 何事も包み隠さず、横浜の真の姿を伝える「おかえり、ヨコハマ」。子供たちはこの展覧会をどう見るのだろう。表面を取り繕いがちな現代社会で、とても心に刺さる展覧会。新しくなった横浜美術館を応援したい。

 

横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」
会期:開催中~2025年6月2日(月)
会場:横浜美術館
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜日(ただし3月20日(木・祝)は開館)、3月21日
お問い合わせ:045-221-0300

http://yokohama.art.museum/