6月4日のことでした。まさに張作霖の列車が奉天付近に辿り着いた時に、線路に仕掛けられた爆薬が爆発してあっという間に列車が燃え上がり、張作霖は爆殺されてしまいます。もちろん関東軍は、自分たちの陰謀でやったことにはせず、現場で死骸として見つかった阿片中毒の中国人二人のしわざにするつもりでした。

張作霖が爆殺された現場(写真:近現代PL/アフロ)張作霖が爆殺された現場(写真:近現代PL/アフロ)

 ところが、ずさんな計画はすぐにばれてしまうのです。

 というのもこの二人は前日、奉天の銭湯で「明日おれたちはでかいことをやるんだ」などと吹聴し、多くの人たちがそれを聞いていた。この連中が自分たちで死ぬようなことをするはずがない、金をもらってやったに違いない、では誰がやったんだということになると、後ろに関東軍がいるのはすぐに察せられるわけです。

 張作霖暗殺の元凶が日本軍だとばれると世界的な大問題になりますから、関東軍は「われわれは関知しない」と押し通します。しかし現場の状況などから日本軍の謀略であることが徐々に明らかになってくる。

 しかし、決定的な証拠はありません。軍閥の大将である張作霖は、対立する軍閥や敵の国民党軍などに狙われる理由はたくさんありますから、阿片中毒の二人がその方面から金をもらってやった、とごまかしはいくらでもきいたのです。