運動することで、原始反射を整えることができる(写真:graphica/イメージマート)運動することで、原始反射を整えることができる(写真:graphica/イメージマート)
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 発達障がいのお子さんは日常生活になんらかの「困りごと」や「トラブル」を抱えています。保護者の中にも、自分の子なのに育てにくい、ほかの子どもと比べて○○ができない、遅れている、発達障がいをはじめ何らかの障がいがあると診断された──など、不安を抱えている方が大勢います。

 文部科学省の調査によると、平成25年から令和5年の10年間で義務教育段階の児童生徒数は1割減少する一方、特別支援教育を受ける児童生徒数は倍増しており、特別支援学級の在籍者数は2.1倍、通常学級で特別な教育支援を利用している児童生徒数は2.3倍で推移しています。

特別支援教育の充実について(文部科学省)

 相談できる窓口も常に混雑していて予約が取りづらいという声がある中、家庭ではどのようにお子さんと向き合えばよいのでしょうか。発達障がいのお子さんの困りごとに運動療育という観点でかかわる松本哲さんの見解を見てみましょう。

※松本哲著・本間龍介監修『発達障がい&グレーゾーン 楽しく遊びながら子どもの「発達」を引き出す本』(青春出版社)から一部抜粋・編集しました。

立つことができない3歳児との出会い

 私はLUMO(ルーモ)という子どもの運動教室を運営しています。運動教室といっても、いわゆるかけっこが速くなるとか、体育が得意な子にするといったものではありません。

 医師が監修した独自のプログラムのもと、いわゆる発達障がいやグレーゾーンの子どもたちが、運動を通して改善していくことを目指すという、運動と療育を掛け合わせたプログラムを実践しています。

 運動では成功体験を繰り返すことで自信がつき、チャレンジができるようになります。「できた!」を増やすことで「苦手!」に向き合う力もついてきます。楽しすぎて、子どもたちが帰りたくなくなる運動教室だと自負しています。

 詳しい内容はこの後に譲りますが、私が発達障がい専門の運動療育に携わるようになったのは、ある男の子との出会いがきっかけでした。

 それは10年ほど前、パーソナルジムを始めたときのことでした。当時、3歳くらいの男の子がお母さんに連れられてジムに来ました。その子は鼻水とよだれが止まらず、自分一人では立てない、歩けない。言葉もほとんど出ない状態でした。

 いろいろな病院をまわってみたけれど、脳にも体にも異常はなく、医師にも原因不明と言われたそうです。

 最初に電話でご相談を受けたとき、「脳にも体にも異常がないのであれば、運動から得られる刺激で発達が促されるのではないか」と直感し、気づいたら「ぜひ、お子さんを預からせてください」と即答していました。

 そして、週1〜2回のパーソナルトレーニングが始まりました。