新型コロナウイルスの感染拡大を受けた全国一斉休校から2年が経つ。学校という日常を失った空白の数カ月は、子どもたちにどんな影響を与えたのか。とりわけ打撃が大きかったとされる困窮家庭は今、どんな状況にあるのか。貧困をはじめ、困難を抱えた子どもたちを支援するNPO法人「さいたまユースサポートネット」の青砥恭(あおと・やすし)代表に話を聞いた。(聞き手、河合達郎、フリーライター)
──一斉休校から2年が経ちました。子どもたちを支援する現場で何を感じますか。
青砥恭氏(以下、青砥):一番大きな問題は、コミュニケーションをとる機会がすっ飛ばされたということです。子どもたちは、人間のコミュニティの中で言葉を獲得していきます。他者との関係の中で、人間の温かさに触れ、支え合うことを学び、育っていきます。
ところが、このコロナ禍ではそれがアウトとされました。安易に人と接触するなと言われ、コミュニケーションもとるなと言われ続けている。マスクをしていて表情も見えない。そして、その状況は今もまだ元に戻っていません。
10年後、20年後に、この子どもたちがどう育つのかが心配です。このあたりは将来、きっちりと検証をする必要があると思います。
文部科学省が発表した2020年度の長期欠席に関する統計では、小中学生の不登校が前年度に比べて増加し、20万人に迫っています。新型コロナの感染を避けるための自主的な欠席も含め、広い意味で「人間に接触することへの恐怖心」が背景にあると見ています。
子どもと一緒にラーメンをすする意味
青砥:じかにコミュニケーションをとるということは、本当に大事なことです。
かつて、長いホームレス経験の後、ぼくたちのとこに来た子がいました。ある夜、おいおい泣きながら電話してきたんです。「ぼく、死にますから」「死にたい、死にたい」って。こっちは「そう言わんと、もうちょっと遊ぼうよ」なんて言いながら、とにかく一生懸命聞くわけです。真夜中まで。話を聞いている間は死にませんからね。
それで「明日か明後日、一緒にご飯食べようよ」ってちょっと話題を変えて、実際に会うんです。寒い日には、温かいものを一緒に食べるのが一番ですよ。一緒にラーメンをすすりながら、「うまいなあ」って言ってね。ぼくたちの仕事は要するに、人を励ますことですから。
──青砥さんのもとには、どのようなSOSが届いているのでしょうか。