歯止めがない政権の行方

 そのほかには、1期目の政権には昔ながらの共和党員――ゲーリー・コーンやレックス・ティラーソンなど――がトランプのやり過ぎを阻止するのに十分な数だけ入閣していた。

 ところが2期目はMAGA(米国を再び偉大にする)運動系の長官や職員がたくさんいる。

 トゥルシー・ギャバードが近々米国の国家情報長官になるかもしれない。そんな話は聞きたくないという態度はストイックでも上品でもない。

 そしてとりわけ重要なのは、2017年の世界は多少の混乱なら吸収できる程度には落ち着いていたということだ。

 インフレ率は低かったし、欧州も平和だった。西側では、直近の大きなパンデミックと言えば1世紀前の話だった。

 それが今では、トランプが関税をかけたり突飛な行動に出たりするのを受けとめる網の力がかなり弱くなっている。

 現実に生じていることへの不安や将来起こりうることへの懸念に言及しつつ、この調子で話を続けることも可能だろう。

 例えば、連邦裁判所の裁判官だ。

 今では、第1期の初めよりもトランプ色の濃い陣容になっている。果たしてトランプの行動を抑制しようとするだろうか。

 また、任期を終える時に82歳になっていることにも触れていいだろう。

 1期目には、大統領退任後の裁判のことや世間の評判について考える必要があった。2期目にも同じことが言えるだろうか。

 しかし最終的には、筆者の――そして多数の政治評論家の――議論は直感的な話になる。

 MAGA運動には今、2017年当時にはなかった驕りが感じられる。8年前にそれがなかった理由の一つは、総得票数では勝てなかったことにある。

 はるかに高い経済成長率、領土の拡張、火星に宇宙飛行士を送って星条旗を掲げるといった最近の話を聞いて、調子に乗っているとか、ちょっといい気になっているんじゃないかと思わないとしたら、読者は筆者とはものの感じ方が違うのだろう(筆者の方が間違っていると思いたい)。

 すべての民主主義国で言えることだが、直近の選挙で勝って大喜びしている政党ほど危険なものはない。

 特に米国の政党は、外の世界に対する影響力が桁違いに大きい。

 2002年の中間選挙で歴史的な好成績を収めた後のジョージ・W・ブッシュの行動や、1964年に宇宙から見えそうなほど大量の票を獲得したリンドン・ジョンソンがそこからベトナムへの攻撃をエスカレートさせていったことなどが思い出される。