右派と左派で意味が異なる民主主義という言葉

 彼らは韓国の国旗である太極旗とアメリカの国旗である星条旗を掲げ、弾劾反対のデモを行っていた。韓国右派は、いつもこうして「自由民主主義大韓民国を守ろう!」と叫んでいる。

 民主主義という同じワードであっても、左派と右派では言葉の意味が全く違うのである。この国には両サイドから見る二つの世界線が存在する。

 右派の支持者たちが支援物資をデモの拠点地に送る様子は、SNSで拡散された。支援物資が集まる場所になったのはソウル漢南小学校の正門前で、そこに山のように宅配の箱が積み上げられていた。

 もともとこのソウル漢南洞は元祖・超高級住宅地で、20年前の韓国ドラマに出てくる富裕層の邸宅が並ぶ街である。そのような場所が一気に戦場と化したと言っても過言ではないだろう。

大統領公邸周辺で起きた抗議デモ(写真:Lee Jae Won/アフロ)大統領公邸周辺で起きた抗議デモ(写真:Lee Jae Won/アフロ)

 保守・右派として名前の通っているYouTuberやインフルエンサーの中には、自腹を切ってフードトラックを出す者も現れた。このような行動をとると必ず、賛同者の寄付が集まるのが韓国だ。筆者のネット上の知人たちも多くが寄付金を出していた。その中には、昨年の政府による医療改革で散々な目にあった医師たちの姿もあった。

 尹大統領を目の敵のようにしていた医師が、大統領を守るには理由がある。

「尹は嫌いだけど、李在明が大統領の国になることだけは避けたい」
「今回の事態で良く分かった。自由と民主主義はタダじゃないのだということを」

 そんな医師たちの言葉に象徴されるように、尹大統領が弾劾されて李在明代表が大統領になると、この国が崩壊するからである。

 民主主義国家において、デモという行動はナンセンスだと考える。すべての国民に平等に投票する権利があるのに、なぜデモをしなければならないのか日本人の筆者には理解できない。ただ、この国ではデモという行動が、不思議なことにさまざまな方面から効果を発するのである。