韓国人の国民性にマッチしているデモ

 これが彼らの愛国心から出る精一杯の行動で、また極度に感情的で思い立ったら行動しないと気が済まないという、彼らの国民性には非常にマッチしている。

 この様子を昼夜問わず中継するYouTuberも現れ、弾劾反対運動が始まってから、大統領の支持率は45%を超えるまでに上昇した。特に20代、30代の若い世代の支持率が急激に上昇している。

 尹大統領が就任してから国会はねじれ状態で、野党は過半数を超えた議席を使って、大統領のやることなすことを徹底的に邪魔していた。それにもかかわらず、尹大統領はいばらの道を必死に進んでいた。それでも国民の理解は得られず、支持率は10%台まで下がった。

 ところが、職務停止状態になった今、身動きの取れなくなった大統領の支持率が上がっているということは、韓国の若者たちが現在の状況に疑問を感じているのではないかと筆者は考える。皮肉にも、これがデモの効果のひとつと言えるのではないだろうか。

 韓国は朝鮮戦争が「停戦した」1953年から現在まで変わることなく、保守系右派と進歩系と呼ばれる左派が対立を続けている。停戦直後の軍事政権時代は、反共産主義が国是となっていた。

 ただ、それは筆者も生まれる前の話で、30代以下の世代には全く実感のない話であろう。2年前には共産主義の滅亡を意味する「滅共」というワードを財閥経営者が発しただけで炎上した。発言者のチョン・ヨンジン副会長が経営する新世界グループの株価は暴落し、不買運動の声まで上がった。

 70年ほどの時の流れの中で、終戦していない国家の国是がうやむやになっていることの象徴ではないだろうか。

 政治的な保守系右派と左派の対立は、アメリカの共和党と民主党のようなものである。しかし、右派にも左派にも「反日」という共通の土台が敷かれているために、キリスト教の古い概念がベースになっているアメリカ保守に比べると、韓国の保守派の土台は脆弱である。