ミャンマー北部に21カ国・6000人以上が監禁?
「玉総」は広東を中心に病院、医療企業、不動産など60企業に投資してきた実業家だが、裏で右腕の金燦とともに人身売買、特殊詐欺など犯罪シンジケートを仕切っていたという。
王星は3日間、このパークに監禁され、特殊詐欺を行う研修をさせられていた。ロマンス詐欺や投資詐欺などの電信詐欺、特殊詐欺は、俳優、タレントのようなルックスや話術にたけた人材を求めており、王星のようないまひとつ売れていない俳優に白羽の矢が立てられたのだろう。
彼が拉致・監禁されて3日目で救出されたのは本当に運がよかった。事情を知っていたガールフレンド嘉嘉がいち早く事件の可能性に気づいて中国内で大騒ぎしたからだ。
最初、嘉嘉は上海警察に助けを求めたが、上海警察は「国外の失踪事件なのでこちらで対応できない」とけんもほろろだった。次に嘉嘉はタイの中国大使館と北部チェンマイの中国総領事館に連絡したが、まず王星が出国したか確認しないと動けない、といって真面目に取り合ってくれなかった。

だが嘉嘉はあきらめずSNSで、事件の可能性を訴え助け訴え続けたところ、舒淇(スー・チー)ら大物女優も反応。実は自分にも怪しげな出演オファーがあり、あわやというところで騙されるところだった、という芸能人も名乗り出るようになった。
王星がミャンマー国境で失踪したという情報が芸能界を中心に拡散されると、中国内外のメディアも報じ、王星救出を求める世論が高まった。
この世論の盛り上がりの背景には、ミャンマー北部の特殊詐欺拠点に拉致、監禁されている中国人の多さがある。中国には少なくとも400人もの被害者家族がいるとされ、彼らもずっと当局に救出を要請していたが取り合ってもらえなかったという。
行動力のある嘉嘉はバンコクに飛び、中国大使館に直接行き、大使館の紹介でタイ警察当局に正式に事件として届け出したのが6日。その日のうちに王星の居場所が確認され、7日には、王星は無事に保護された。
タイの報道によれば7日、タイとミャンマー当局(国軍政府)、現地支配勢力のカレン国境警備隊(カレン民族軍)の三者協議の後、タイ・ミャンマー友好橋を通じて、王星はタイ警察に引き渡された。
ミャンマー北部には、こうした「特殊詐欺パーク」がいくつもあり、21カ国・6000人以上が監禁され働かされているという。ちなみに、その中には日本人何人か含まれているという情報もある。
救出された王星は、頭を丸坊主に刈られ、憔悴した様子だった。それでもタイ当局の事情聴取に応え、自分が監禁されたアポロパークに少なくとも60人の中国人が監禁されていることも明らかにしている。
こうした事件は中国では珍しい話ではない。ミャンマー北部が中国人による特殊詐欺拠点が集中しており、大勢の華人、中国人が各地で拉致され監禁され、特殊詐欺に従事されているという状況は、周知の事実である。