先月19日に、渡邊恒雄読売新聞本社代表取締役主筆が、98歳で大往生した。あのナベツネさんを最後に、「昭和の野武士」的なサラリーマン経営者は、すべて死に絶えたと思っていた。それが今月の日経新聞を読んでいて、伊藤忠に「棲息」していたことを発見したのだ。
もう一人の「野武士」
実は今月、もう一人、そのような経営者を発見した。7日に「怒りの記者会見」を開いた日本製鉄の橋本英二会長(69歳)である。橋本会長は30分近くにわたって、カメラの放列の前で、日本の「親分」(同盟国)であるアメリカの大統領が拒絶したUSスチールの買収に関して、たった一人で、自分の言葉で、毅然とした態度で、自らの正当性を主張したのだった。
時にバイデン大統領を「バイデン」と呼び捨てにもしていた。さらに、トランプ次期大統領にも注文をつけた。
「トランプ次期大統領の主張は、製造業をもう一度強くしたい、白人労働者を中心とした製造業の労働者たちに、豊かな暮らしと明るい未来を与えたいという主旨だ。われわれはその主旨に、まさしく沿っている」
私はこの全編を、インターネット中継で見たが、久々に感銘を受けた会見だった。「昭和の野武士」は日本の大企業で、どっこいまだ死に絶えていないことを思い知り、快哉(かいさい)を叫んだ。