ネイティブスピーカーが急速に減少しているアイヌ語

 同発表からの引用を続けると、1870年当時、アイヌ語の話者はまだ1万5000人ほどが存在していた。しかし1917年には、アイヌ語のみしか使わない話者の数は350人にまで減少し、それ以来、アイヌ語の衰退が急速に進んでいるという。

 現時点でアイヌ語のネイティブスピーカーとされるのは、既に10人を下回っているとする推測もある。

 もちろん、動物が絶滅の危機に瀕した場合と同様、消滅危機言語についてもさまざまな対策が行われている。

 アイヌ語の場合、1997年に成立した「アイヌ文化振興法」によって、言語復興事業にも力が入れられるようになっている。

 たとえば、各地におけるアイヌ語教室の開催や、学習用マテリアル/コンテンツ類の拡充、アイヌ語の音声資料のデジタル化・アーカイブ化といった具合だ。しかし肝心の話者が減少している状況では、そのまま「絶滅」してしまう言語も少なくない。

 そこで注目されているのが生成AIだ。特に大規模言語モデル(LLM)を基盤とするAIの場合、文字通り高度な言語能力を有しており、英語以外の言語や方言などへの対応も進んでいる(参考記事)。その力を、消滅危機言語の保護に役立てようというわけだ。