(2)パワーカップル増やす「女性活躍推進」
若者のFIRE願望の理由として、世帯状況の変化も指摘されている。増加する独身世帯は子育て費用が不要なため生涯支出が抑えられ、早期リタイアがしやすい*1。また、共働き世帯では、夫婦ともに年収700万円以上の「パワーカップル」が2013年の21万世帯から2023年に40万世帯へと倍増しており*2、これらの世帯も早期リタイアの条件を満たしやすい。ライフプランとして現実的であれば、当然FIRE願望も持ちやすい。
このような世帯状況の変化の背景には、女性活躍推進の影響がある。もちろん、女性活躍が未婚化に直結するわけではない。ただし、結婚に対する価値観の多様化やキャリアと家事・育児の両立の難しさ、根強く残る上方婚意識(自分より収入の高い男性との結婚を求める意識)などが相まって、未婚化が進んだことが指摘される。
本来、女性活躍推進の目的の1つは、超高齢社会における労働力不足対策だった。事実、結婚・出産によりリタイアする女性が減り、貴重な労働力となってきた。冒頭の図で女性の早期リタイア希望者が横ばいなのは、女性活躍が、早期リタイア希望者の増加を打ち消しているからだろう。しかし、世帯状況の変化を介して、結果的に若者のFIRE願望を刺激したと見ることができる。