中国大使、尹大統領を無視し野党代表と親密

 外交官レベルでも、「中韓冷戦」は展開された。2020年1月から昨年7月まで韓国に駐在した邢海明(けい・かいめい)中国大使は、「韓国政府から最も嫌われている大使」とのレッテルを貼られていた。

 邢海明大使の方も、まるで尹錫悦政権を無視し、最大野党の「共に民主党」の方を向いて外交活動を行っているかのようだった。2023年6月には、同党の李在明代表と会談した際、「(尹錫悦政権は)アメリカが勝利して中国が敗北するほうに賭けているようだが、そのような者は後に必ず後悔することになる」と凄んでみせた。この時は、尹大統領自らが、邢大使に対して怒りの声を上げたほどだった。

23年6月8日、韓国・ソウルの中国大使公邸での夕食会前に、韓国「共に民主党」の李在明代表と握手する邢海明駐韓国中国大使(写真:AP/アフロ)
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 中韓関係がこのような「冷戦状態」だったため、邢大使が昨年7月にソウルを離任した後、中国大使は「空席」が半年近くも続いた。中国外交部としても、「後任の人選」に頭を抱えてしまったのだ。これは日本外務省の外交官も同様だろうが、自国と仲違いしている国の大使など、引き受けたくないものだ。

 ところが昨年末、事態は急変した。冒頭述べたように、尹大統領が「戒厳令」を振り回し、あげく職務停止となってしまった。そして次には、「自分が大統領になったらすぐにも北京を訪問したい」と言う「親中派」の李在明「共に民主党」代表が控えている――。

 ということで、暮れも押し詰まった昨年12月27日、新たな中国大使が、ソウル金浦(キンポ)空港に降り立った。戴兵(たい・へい)大使(57歳)である。