吉田響が狙っていたのは1時間05分20秒
信じられなかったのが吉田響の設定タイムだ。当初から区間記録(1時間05分49秒)を大幅に上回る「1時間05分20秒」をターゲットにしていたのだ。
「設定タイムは相澤選手と黒田選手の記録を参考にしたうえで、ラスト3.1kmの戸塚の坂を自分は8分30~40秒まで引き上げて、大幅な区間記録を狙っていました。自分は5区をやってきたので、その自信と希望的観測です。最初の10kmを28分20秒で通過して、15kmもその流れ、ペースを維持するイメージで、最後の8kmはどの選手もペースが落ちているので、そこからペースアップをして、最後の戸塚の壁で全員を抜いてやるんだ、という作戦でした」
最後の3.1kmは9分02秒かかった分、目標タイムには届かなかったが、ラストの追い込みは強烈だった。
「区間賞は獲れませんでしたけど、日本人最高記録は作ることができました。卒業後も競技を続けていくので、そこは自信になりますね」
「山の神」を超える存在になれたか? と問うと、吉田はしばらく考えて、「そこはちょっと難しいなと思います」と答えた。本人のなかでは、2区で快走しても、物足りなさが残っているようだった。
しかし、タイムのうえでは、早大・渡辺康幸、順大・三代直樹、順大・塩尻和也、東洋大・相澤晃ら“伝説のランナー”たちを越えたことになる。
今後はプロランナーとしてロサンゼルス五輪のマラソンを目指していくという吉田。彼が活躍することで、今回の記録の“価値”がさらに高まっていくだろう。そして「山の神」を凌駕するような存在になるかもしれない。