軍隊経験に根ざした「反戦」の強い信念
そこまでこだわる根底には彼自身の戦争体験があった。
「軍隊に入ってから、毎朝毎晩ぶん殴られ、蹴飛ばされた。古代ローマの奴隷もアメリカの黒人奴隷も、こんな酷い目には遭ってはいないだろうと思った」と軍隊時代に非人道的な扱いを受けたエピソードをよく語っていました。
それはひどい体験をしたわけです。戦争とはいかにひどいものなのかということを、身をもって体験したからこそ「戦争はさせない」という強い信念を持っていた。
かつて、私が田中角栄元首相を取材したとき「戦争を体験している人間が政治をやっている間は、絶対に戦争はやらない。大丈夫だ」と言っていました。ナベツネさんの戦争に対する考えを聞くと、その言葉を思い出していました。
ナベツネさんと決定的に考えが異なったのは日米関係についてです。
彼は「日米同盟は賛成だが、今の日米同盟は対米従属だ」という。僕もそれには同意する。日米地位協定がある限り、米軍の最高司令官が決めたことに対して日本の首相も「NO」とは言えないからです。それでは「日本を絶対に戦争させない」ということも実現できない。
そこで、ナベツネさんは「日本を戦争させないためには対等にすべきで、そのためには軍備を増強すべき。そのためには憲法改正も必要だし、核武装も考えるべき」という主張だった。そこが僕と決定的に意見が違った。
ナベツネさんからは毎年、招待されて東京ドームの貴賓室で並んで野球を観戦させてもらいました。その間、政治のこと、戦争のこと、あるいは哲学についてなどなどいろんな話をしました。本当に博学でしたね。
ただ、ある日をきっかけに彼とは断交することになります。
きっかけはライブドアによるフジテレビ買収騒動が起きたとき、僕がホリエモンを応援したからです。
それ以降は、ぱったり声がかからなくなったし、連絡をしても返事がなくなりました。はっきりと喧嘩したわけではないけど、それ以来お会いする機会には恵まれなかった。