元の専門を離れる医師たち
例えば、一般の外科、整形外科、麻酔科の専門医資格を持つ医師がいた。さらに、心臓血管外科、消化器外科、呼吸器外科、小児科出身などの専門医が美容医療の院長となっているケースもあった。
しかも、それぞれの分野では、専門医資格を持つ医師が5人程度確認できることが多く、一人や二人の話ではないことが明らかになった。
形成外科専門医の13%が多くのウエートを占めているものの、国の専門医制度に基づいた専門医資格を保有する院長も全体の30%に上った。
以前に「心臓血管外科の優秀な医師が美容医療に入った」と、嘆きのような声を聞いたことがあった。初めて聞いたときは珍しいと感じたが、今では珍しくないかもしれない。
例えば、心臓血管インターベンションの専門医という資格も確認されたが、その院長がいる美容クリニックで心臓発作を起こしても、適切に救命されるかもしれないなど、余計な想像をしてしまう。
医師のキャリア選択は個人の自由である一方で、日本の高度医療を支える専門医が現場を離れている事実には目を向ける必要がある。
その他の医師も含めれば、多様な専門医を持つ医師たちば、元いた専門の道から去っている。
しかも、今回調べたのは院長に限った話だ。その他の医師も含めると、多様な専門を持つ医師たちが、それぞれの専門分野を離れていることが予想される。
◎美容外科チェーン院長、専門医資格を独自調査、美容や形成にとどまらない多彩な専門医が支える構造、7つの美容医療チェーンを対象に調査(ヒフコNEWS)
院長を調べる中で、もう一つ特徴的な院長のバックグラウンドを発見した。前述の「慶應義塾大学医学部首席」の院長もそうだが、医学部卒業後、2年間の初期研修を終えてただちに美容医療に進む医師の数が尋常ではないという事実だ。