美容医療で広がる「直美」の動き
経歴が比較的詳しく記述されている国内最大の美容医療チェーン、湘南美容クリニック院長の経歴を見ると、確認できる124人のうち実に32人が医学部卒業後2年でただちに湘南美容クリニック(1人は別の美容医療施設)に入職していた。同チェーン院長の中で4人に1人は医学部卒業後、2年でこの分野を選んでいる。
医学部卒業後3年で美容医療に来た院長も含めれば、さらに早めの入職組は増える。
前回の記事「美容医療大国・韓国で起き始めた専門医制度の崩壊、日本も対岸の火事では済まない」でも書いたように、韓国では、医学部を卒業してから1年間、インターンとして基本的なことを学び、そのうち3割は専門医資格を取るために、レジデントとして専門研修を受ける。
残りの7割は専門資格を取らずに一般医を目指すが、その一般医が美容医療を目指す傾向が強まり、レジデントと待遇で大きな差が付き、レジデントが過酷な労働と低い給与で苦境に陥っているという状況を紹介した。
日本の場合、医学部卒業後、2年間の初期研修期間で診療の基礎を学ぶ。医師は初期研修を終えないと、そもそも診療に当たることができない。通常は初期研修を終えた後、3年間、専門医資格を取るための研修を受ける。この期間の研修医のことを「専攻医」と呼ぶ。
以前に「直美」という言葉を聞いたことがあった。「なおみ」ではなく「ちょくび」と読む。初期研修を終え、ただちに美容医療に入職する医師を指す。
そんな医師もたまにはいるのだろうと思ったことがあったが、美容医療チェーン院長リストをながめていると、小さな動きではないように思える。「直美」がささやかれるほど、トレンドは強まっているのではないか、と。
韓国ほどボリュームは大きくないかもしれないが、韓国で言う「一般医」として、レジデントを経ずに美容医療に進む動きに似た状況が日本でも起きつつある。