突然、地主が処理費用を請求されるケースも
信管を抜き取って安全化する作業は自衛隊法によって自衛隊の任務とされていますが、それ以外の作業、例えば住民への告知、交通規制、避難誘導、警備など不発弾処理の方法などを取り決めた法律はありません。
政府は「戦後処理の一環として国が責任を持つ」(2019年、参議院での質問主意書に対する答弁書)として、地方公共団体に費用の2分の1以内を補助する「不発弾等処理交付金」の制度を設けてはいます。それでも、自治体側がどう賄うかの取り決めはないのです。
このため、費用の対応は自治体によってバラバラです。全額を自治体が負担するケースがある一方、全額を地主に請求するケースもあります。
2015年には大阪市で見つかった不発弾の処理に関し、地主が突然、大阪市から576万円を請求され、それを不服として大阪市を提訴したこともあります。地主は大阪地裁、大阪高裁でいずれも敗訴しました。また、裁判には至らずとも、泣く泣く費用を負担している地主も少なくないと思われます。
日本は戦後、絶え間なく不発弾の処理を続けてきました。2023年度は1日平均で6件もの処理が行われた計算になります。しかも、1件で複数の爆弾を処理するケースが大半ですから、処理された爆弾の数自体はこれよりはるかに多いはずです。
自衛隊関係者の中には「最終的な処理を終えるには、あと70年くらい必要」という声もあるほどです。
また、ポーランドやドイツ、東南アジアでも第2次世界大戦時の不発弾は、いまも頻繁に見つかっています。処理しても処理しても出てくる戦争の「負の遺産」。それは日本だけの問題でもないのです。