経団連次期会長に就任する筒井義信・日本生命会長経団連次期会長に就任する筒井義信・日本生命会長(写真:共同通信社)

「財界総理」の存在感が薄れていったワケ

「財界の総本山」とも言える日本経済団体連合会(経団連)。その名の通り、日本自動車工業会や日本鉄鋼連盟など、業種別企業団体の多くが加盟するほか、大企業と呼ばれる企業の大半が会員に名を連ねる。そのため、経団連の会長は、別名「財界総理」とも呼ばれている。

 もっとも本物の総理大臣に匹敵するような存在感を持っていたのは1990年代半ばの、日本経済が世界をけん引する力を持っていた時代までだった。失われた10年が20年、30年となり、日本経済の影響力が弱まるにつれ、財界総理も力を失っていく。

 昔は政界と財界は時には角突き合わせて切磋琢磨していたが、今では財界が政界にすり寄る構図が一般化した。当然、財界総理は名ばかりとなった。

 そのため、経団連会長が誰になろうと、ほとんどの人は関心を持たない。昔は経済分野の雑誌ではよく「次期財界総理は誰だ」という記事を見かけたが、最近はほとんど見ない。掲載されたとしても、その扱いは極めて小さい。

 ところが、12月17日に内定した次期経団連会長人事は、日本経済新聞のみならず一般紙でも大きく取り上げた。なぜなら、現会長の十倉雅和・住友化学会長に代わって2025年5月29日に新会長に就任する筒井義信・日本生命保険会長が、従来の基準に照らし合わせれば会長には絶対になれない立場だったからだ。

>>【表】経団連・歴代会長の顔ぶれ

 経団連の定款には、会長は理事の中から選任するとしか書かれていない。しかし実際にはいくつもの不文律があった。

経団連の現会長、十倉雅和氏経団連の現会長、十倉雅和氏(写真:共同通信社)